陰謀論を育てる──ジョージアのディープな夢|五月女颯

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2026年3月13日刊行『ゲンロンy』

 

 ロシアによるウクライナ侵攻は世界の多くの国にとっては衝撃をもって受け止められたが、隣国ジョージア(グルジア)では、それとは異なる反応としてあらわれた。

 2008年にロシアとの戦争を経験し、国土の20%が分離・独立状態にあって実効支配が及んでいない同国民は根強い反露感情を抱えているが、それにもかかわらず、政府与党「ジョージアの夢」は、欧米各国による制裁に参加せず、義勇兵の出国を認めないなど、端的に言って「ロシアを怒らせない」ように穏和な対応を取ってきた。また、ジョージアで「第二戦線」がひらかれるのではないかという議論もしきりになされていた。すなわち、ウクライナの「第一戦線」に対するジョージアでの「第二戦線」であり、ジョージアもロシアとの戦いに参加すべし、との呼びかけがウクライナなどからなされているなどという話がまことしやかに流れ、それに対して政府与党は開戦を否定し、平和が重要であると様々なレベルで繰り返した[図1]。当時のジョージア政治や社会の空気感は2024年12月にすでにwebゲンロンの記事に書いたとおりであるが★1、端的にいえば、ウクライナと比べても小国のジョージアは、2008年の戦争経験を踏まえ、再び戦火を見ることを懸念してロシアを刺激しない方針をとったのだ。そうしたロシアへの宥和的な態度はウクライナやEU諸国から反感を買うのには十分であり、与党「ジョージアの夢」創設者にしてロシアで財を成したオリガルヒのビジナ・イヴァニシヴィリ一家や党の幹部らは、制裁を科されることとなった★2

図1 戦争で破壊されたウクライナの体育館と、綺麗に整備されたジョージアの体育館を対比させた広告。キャプションは左から「戦争にNO!」、「平和を選べ」。ジョージアの地下鉄駅にて(2024年)。撮影=筆者

 その後もジョージア政府与党はロシアに宥和的な立場を堅持し続け、EUないし西側諸国との溝がますます深まっていくことになるのだが、この緊張した政治的文脈にユニークなジョージア語が突如として登場する──それは「グローバル戦争党 გლობალური ომის პარტია」である。

五月女颯

1991年生まれ。博士(文学)東京大学。専門:ジョージア近代文学、批評理論(特にエコクリティシズム)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現在、東京大学大学院 人文社会系研究科 現代文芸論講座 助教。著書に『ジョージア近代文学のポストコロニアル・環境批評』(成文社、2023年)。
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