陰謀論を育てる──ジョージアのディープな夢|五月女颯

ロシアによるウクライナ侵攻は世界の多くの国にとっては衝撃をもって受け止められたが、隣国ジョージア(グルジア)では、それとは異なる反応としてあらわれた。
2008年にロシアとの戦争を経験し、国土の20%が分離・独立状態にあって実効支配が及んでいない同国民は根強い反露感情を抱えているが、それにもかかわらず、政府与党「ジョージアの夢」は、欧米各国による制裁に参加せず、義勇兵の出国を認めないなど、端的に言って「ロシアを怒らせない」ように穏和な対応を取ってきた。また、ジョージアで「第二戦線」がひらかれるのではないかという議論もしきりになされていた。すなわち、ウクライナの「第一戦線」に対するジョージアでの「第二戦線」であり、ジョージアもロシアとの戦いに参加すべし、との呼びかけがウクライナなどからなされているなどという話がまことしやかに流れ、それに対して政府与党は開戦を否定し、平和が重要であると様々なレベルで繰り返した[図1]。当時のジョージア政治や社会の空気感は2024年12月にすでにwebゲンロンの記事に書いたとおりであるが[★1]、端的にいえば、ウクライナと比べても小国のジョージアは、2008年の戦争経験を踏まえ、再び戦火を見ることを懸念してロシアを刺激しない方針をとったのだ。そうしたロシアへの宥和的な態度はウクライナやEU諸国から反感を買うのには十分であり、与党「ジョージアの夢」創設者にしてロシアで財を成したオリガルヒのビジナ・イヴァニシヴィリ一家や党の幹部らは、制裁を科されることとなった[★2]。

その後もジョージア政府与党はロシアに宥和的な立場を堅持し続け、EUないし西側諸国との溝がますます深まっていくことになるのだが、この緊張した政治的文脈にユニークなジョージア語が突如として登場する──それは「グローバル戦争党 გლობალური ომის პარტია」である。
その不穏なジョージア語が公の場にはじめて姿をあらわしたのは、2022年11月8日のことだった。欧州議会は、決議の修正案において、ジョージアが制裁に参加しないことでロシアの制裁回避に使われていると非難したが、与党「ジョージアの夢」のイラクリ・コバヒゼ党首(当時。現在は首相)が、これに対して批判を返すなかで飛び出たものである。曰く──
「グローバル戦争党」が存在しており、その代表者は嫌悪すべき欧州議会議員であって、彼らの唯一の目標は、今日、残念ながらウクライナで行われているプロセスをジョージアでも引き起こそうとすることだ[★3]。
ここで彼は「グローバル戦争党」なるものが存在し、その一員である欧州議会議員を通してジョージアをウクライナのように対露戦争へと参加させようとけしかけているのだ、と述べる。さらに、彼は続けて、「ウクライナで行われているプロセス」について説明する。
これらの人々は、ジョージアでの第二戦線の開戦を目的とする共通の組合と直接の関係があり、そしてその試みもこのこと全てに関係している。これら嫌悪すべき欧州議会議員によって主導された[決議の]修正のひとつは、ジョージアがロシアに制裁を科さなかったことと関係している。我々はこのことも、地域で進行している戦争にジョージアを引き込もうとする目標のための、いつもの一歩であることをよく理解している[★4]。
このように、「第二戦線」という言葉は当時繰り返し言及されていた。ウクライナ戦線に集中するロシアの背後から(比喩ではなく)援護射撃をせよ、という意味の第二戦線の主張が、軍事戦略としてどこまで現実的かという議論はここではできないが、ジョージアがそのような軍事行動を実行し開戦することは、たとえ反露強硬派の「過激な野党」が政権を担っていたと仮定しても、荒唐無稽な考えに筆者個人には思える。だが、少なくともジョージア与党界隈ではこのような懸念がまことしやかに語られ、そしてそれが自身の政策への支持を呼びかけるために利用されていたのである。
もっとも、ロシアへの強硬姿勢を見せ、ウクライナが領地を回復するまで支援を続けようとするEUの姿勢に反感を抱いているのは、ジョージアだけではないだろう。アメリカはトランプ政権になってEUとの距離を鮮明にしているし、またトルコのエルドアン大統領はそれまでにもすでにEUの姿勢への疑義を表明していた。エルドアンは、2023年3月29日にテレビインタビューで「もしここ2年間の我々の努力がなかったら、西側クラブは対ロシア戦という環境にトルコを引き込んでいただろう」と述べている[★5]。これ自体、EUから距離を保とうとする第三極としてのトルコの外交的立場を示す(大統領選挙前の)発言であるが、これに対してすでにジョージア首相に就任していたコバヒゼはコメントを求められ、以下のように述べている。
グローバル戦争党は存在する。これに私は非常に具体的な人間たちを含意しているのだが、つまりグローバル戦争党が存在し、その利益は、ウクライナの第一戦線が最大限長期化し、ジョージアに第二戦線がひらかれることであり、そして軍事的紛争が、彼らの希望にしたがって他の国にも波及していく可能性があるということであって、これは非常に残念で憂慮すべきことだ。このことを背景として、重要なのは、第一に我々は我々自身の国家の利益を守ることであり、また[同様に]重要なのは、ジョージア社会が覚醒していなければならないということだ。我々、ジョージア社会は、ジョージアのウクライナ化を許してはならず、このためには覚醒が必要だ。「第二戦線」に関連するリスクは現実的なものであり、グローバル戦争党がジョージアで自らの計画を実現する手段を与えないよう、社会は覚醒していなければならない[★6]。
このコメントも同様に、「第二戦線」やジョージアのウクライナ化をたくらむグローバル戦争党の存在を示唆している。この発言はエルドアンの発言に呼応しており、ここでの真意は実質的にはEU批判にあるものの、そこにあえて「グローバル戦争党」という言葉を使っているという点に注意を払いたい。
「グローバル戦争党」という言葉は陰謀論めいているが、ここまでにまとめておいたように、対露制裁へのジョージアの不参加と、決議という形をとったEUからジョージアへの圧力に対する不満を表しつつも、欧州議会議員のみならず、その背後にある不特定の人々の統一的な意思があると、その言葉を使って指し示そうとしているようだ。そこに示唆されている人々のうちの一部は、ウクライナ戦争以前から伝統的に続いているジョージアの与野党対立の文脈から推測することができる。ジョージアの選挙監視団体ISFEDは、ウクライナ侵攻前の2022年1月に、与党議員マムカ・ムディナラゼが野党「統一国民運動」を「戦争党」と呼び、反対に自党は「平和の政治」を行っていると述べたことを指摘している[★7]。というのも、野党「統一国民運動」は、2008年のジョージア=ロシア戦争の際に与党として戦争の当事者であったからだ。「統一国民運動」が、ウクライナ侵攻の前後、そのウクライナ・コネクションを通じてジョージア政府与党にウクライナ側から圧力をかけていたことは、やはりwebゲンロンの記事にまとめた通りであるが、強硬な反露路線で戦争にまで突き進んでしまった野党を直接的に名指しし牽制・非難するために使われた「戦争党」という言葉が、2022年の侵攻後においてはウクライナ問題でのジョージアとEUの対立の文脈に転用され、そしてそれゆえに「グローバル」の冠がついたのだ。
……と書いていて調べていたところ、実は「グローバル戦争党」という言葉の考案者自身が(親切にも)この経緯を説明してくれていた。その考案者とは、与党「ジョージアの夢」の創始者にしてオリガルヒのイヴァニシヴィリに他ならない。彼は、2024年10月の与党系テレビ局「イメディ」(希望)のインタビューで、次のように種明かしをしている。
ところで、グローバル戦争党と最初に言ったのは私かもしれず、そしてそれは彼らのお気には召さなかったようだ。グローバル戦争党と名付けたのは、戦争党は「統一国民運動」がここ[ジョージア]にいて、それと間違わないように、そしてより大きな勢力があることがわかるように、だからこの用語を考え出したのだ。我々が考えださなかったら、皆が「統一国民運動」を戦争党として思ったことだろう。この[ジョージアのウクライナ戦争参加の]ために彼らは[統一国民運動が政権に戻ることを]望み、だから同様の勢力が我々に申し越してくるのだ──EUの官僚ないしはアメリカ人たちが。この勢力はとても巨大な勢力で、莫大な資源を持ち、様々な先進国の非常に多くの官僚に手が届き、そしてここではその勢力を、コントロールしていた自身の勢力を、取り戻さんとしている[★8]。
(具体的な説明で助かる!)つまり、元々ジョージア国内の与野党対立において与党を「戦争党」と呼んでいたところ、ウクライナ侵攻を契機としてその批判の矛先がEUやアメリカにも及び、それゆえ「グローバルな戦争党」と呼ぶようになったのである。
あまりにも数が多いので網羅的に紹介することはできないのだが、「グローバル戦争党」というフレーズは、コバヒゼ党首(当時)によって最初に公に口にされて以降(そしてそれは実はイヴァニシヴィリ考案のワードを繰り返していたのだが)、与党政治家から頻繁に口に出され、様々な人物を代入することができる自家薬籠中の物となった。例えば、野党「国民統一運動」を率い、2008年のジョージア=ロシア戦争の際には大統領を務めていたミヘイル・サアカシヴィリの釈放を求めて署名活動が起こり、ヨーロッパの外交官らもそれに署名した2023年2月7日には、コバヒゼ党首は次のように発言している。
存在しているのだ、我々が呼ぶところの「グローバル戦争党」なるものが。ジョージアにおいて唯一関心を持っていて、それこそがサアカシヴィリの釈放である。彼らは、[野党政治家である]ハベイシヴィリ、メリアやその他を通して[一連の事態を]見ている。彼らはここ、ジョージアでなにもコトを起こすことができない。サアカシヴィリから今一度野党のリーダーを創り出すことを欲していて、サアカシヴィリが[牢獄の]外にいて欲しいのは、ジョージアで混乱を生み出すためであり、その混乱の最終地点は第二戦線でなければならない[★9]。
あるいは、EU加盟交渉が進行していた2023年6月14日には以下の発言もしている。
すべてのコンセンサスが必要だ。27カ国から1カ国を[コンセンサスの]外に招き出すだけで、[ジョージアにEU加盟候補国の]ステータスは与えられない。「グローバル戦争党」がいかに簡単に影響を与えられるか、わかるだろう。「統一国民運動」はグローバル戦争党の可哀想なエージェントだ。私は、この「統一国民運動」[という語]で統一国民運動党を意味していない。その党は困難を抱えているからだ。ここでは集合的な「統一国民運動」についての話をしている。「統一国民運動党」と、[野党または野党政治家である]レロ、ガハリア、ギルチ、ヴァジャゼ、これらはすべて「グローバル戦争党」の可哀想なエージェントだ[★10]。
私たちはここまで、「グローバル戦争党」が主にウクライナ侵攻に関連して、EU(の議員たち)を批判する文脈で用いられていたことを確認してきたし、それならば理解も比較的容易いのだが、実際にはこのように「グローバル戦争党」で括られる範囲はより広範であり、それゆえに、陰謀論的な意味合いを持つのだろう。上記の2つの引用では、前者では外的なグローバル戦争党が野党を利用して第二戦線の計画を実行しようとし、後者では内的なグローバル戦争党すなわち野党諸派が政権批判を対外的に行うことでEU加盟を妨害する存在として名指しされており、つまり外部と内部にそれぞれジョージア政府や与党に抵抗する勢力が存在しそして結託しているのだ、と読める。もちろん、これらの野党勢力は、与党時代からEU各国やウクライナの政治家と一定のパイプを有しており、それを自身の党利のために用いると考えるのは自然なことだが、しかしそれのみでEU各国のジョージア政府への態度が決まるわけでもないだろう。藤井聡が言うように、「そこにあるのは大小様々なプレーヤーがそれぞれの意図と目論見の下で押し合いへし合いしている動学的な「構造」に過ぎない[★11]」のだが、「グローバル戦争党」という言葉の曖昧さゆえに、そこに一枚岩でないはずのEU各国も野党諸派も一緒くたに括られてしまうのだ(どこの国でもそうかもしれないが、ジョージアでも野党共闘は実現していない)。いずれの政治主体も、いずれかの局面で政府与党と利害が対立しているだけに、それらに対する政府与党側からの批判もまったく荒唐無稽には、少なくとも支持者のあいだでは、聞こえないだろう。それゆえ、その陰謀論的語法の問題もまた根深いものである。
*
私たちはトランプの時代を生きている。日本において、それは第一に関税の形で問題として噴出したが、ジョージアにおいてそれはやはり国際政治や地政学的な問題として表出しているように思われる(関税がさほど問題となっていないのは、哀しいかな、ジョージアから合衆国へ送り出す輸出品がほとんどないからか)。ここまで、ジョージア陰謀論界隈(あるいは界隈の影のリーダー)の独自の発明である「グローバル戦争党」という言葉について概観してきたが、トランプの大統領就任に際し、めでたくそこに新たな語彙が加わった。2025年1月8日、与党「ジョージアの夢」の政治評議会が長文の声明を発出したが、以下、そこからやや長めに引用してみたい。
アメリカで選出された大統領のチームは、アメリカの公的組織のなかに存在する「ディープ・ステート」を破壊することについて、希望の持てる声明を発表している。トランプ大統領は選挙前にすでに、「アメリカが「ディープ・ステート」を破壊するか、あるいは「ディープ・ステート」がアメリカを破壊するか」と述べた。事実として、過去4年間にわたって、まさに「ディープ・ステート」が、アメリカのみならず、世界の国をいくつも破壊してきた。「ディープ・ステート」はEUに非常に重い経済問題をつくり出した。「ディープ・ステート」は世界の国家をいくつも戦火に包みあげた。そして最も重大なこととして、「ディープ・ステート」の庇護者パトロンの破壊的影響は、我々の友好国ウクライナにこそ見受けられる。ウクライナは、2014年まで、主権、領土の一体性、平和、そして2000億の経済を有していたが、今日、実際に破壊されていて、これについて「マイダン」[2014年の革命]の作者たちはいかなる責任もとっていない。
アメリカで選出された大統領のチームは、アメリカの公的組織のなかに存在する「ディープ・ステート」を破壊することについて、希望の持てる声明を発表している。トランプ大統領は選挙前にすでに、「アメリカが「ディープ・ステート」を破壊するか、あるいは「ディープ・ステート」がアメリカを破壊するか」と述べた。事実として、過去4年間にわたって、まさに「ディープ・ステート」が、アメリカのみならず、世界の国をいくつも破壊してきた。「ディープ・ステート」はEUに非常に重い経済問題をつくり出した。「ディープ・ステート」は世界の国家をいくつも戦火に包みあげた。そして最も重大なこととして、「ディープ・ステート」の庇護者パトロンの破壊的影響は、我々の友好国ウクライナにこそ見受けられる。ウクライナは、2014年まで、主権、領土の一体性、平和、そして2000億の経済を有していたが、今日、実際に破壊されていて、これについて「マイダン」[2014年の革命]の作者たちはいかなる責任もとっていない。
今日、EUの官僚制の価値観は非常に重大な状況にあり、このことは欧州議会によってジョージアに関連して採決された5つの決議によって最も良くあらわされている。この決議により、欧州議会はビジナ・イヴァニシヴィリを罰し、サアカシヴィリとその他の犯罪者を釈放し、LGBTプロパガンダに対する法律の撤回などを要求した。最新の、第5の決議において、欧州議会は、重要な[政治の]担い手のなかでさえ、それまで誰も要求できなかったことを公に要求した──ロシアへの制裁の発動とジョージア経済の崩壊である。この傾向を考慮すると、欧州議会は[今後なされうる]第6の決議において、高い確率で、ロシアと開戦することを公に要求するだろう[★12]。
新たな語彙とは、「ディープ・ステート」のことである。説明するまでもなく、ディープ・ステートはトランプやその支持者が頻用する用語であるが、トランプの大統領就任のタイミングで与党「ジョージアの夢」も、それまで「愛用」していたグローバル戦争党からディープ・ステートへと、使用する語彙を変更したのである。
他方で、上記の引用を読めばわかるように、「グローバル戦争党」と「ディープ・ステート」が意味するところはほとんど同一である。すなわち、従来の主張においてグローバル戦争党がしてきたように、ディープ・ステートもまた、ウクライナを破壊し、ジョージアに第二戦線を開こうとし、イヴァニシヴィリらジョージア政府与党関係者に制裁を科し、そしてサアカシヴィリ元大統領を釈放しようとする(これらに加えて、上記引用ではここに「LGBTプロパガンダ」なる語を読むことができるが、これについては後述する)。声明の別の箇所では、「グローバル戦争党が様々な国でより深く根を張れば張るほど、また、あちらこちらの国において、グローバル戦争党の非形式的な影響の主要な道具として我々の前に出現する、ディープ・ステートの転移が強ければ強いほど、ジョージアの国家や人々に対する当該の国の態度は、ますます非ジョージア的である」と書かれている。この文意をどれだけ真剣に受け取るか、あるいは受け取ることに意味があるかは難しいところだが、つまり、ディープ・ステートとはグローバル戦争党の「道具」であり、グローバル戦争党は、ディープ・ステートを各国に「転移」させ、そしてその一員である各国の政治家や外交官、官僚を通じて反ジョージア的な活動を行っている、という趣旨になろうか。
2025年1月の時点では、新たなトランプ政権が、ウクライナ問題とそれに関連する対ジョージア外交政策において、与党「ジョージアの夢」に利するものになるとの期待があったのだろう。すなわち、ウクライナ支援を続けイヴァニシヴィリらへの制裁を加える、彼らにとっては悪夢のようなバイデン政権から、停戦に自信を見せ、ロシア寄りでさえあったトランプ政権への移行は、EU各国やアメリカとの緊張しこじれた関係を一気に解決してくれる希望のように映ったのかもしれない。「トランプ大統領による「ディープ・ステート」解体の問題が成功裡に終結することは、ジョージア=アメリカ関係の質的な変容を保証することができ、このことは、私たちが信じるに、ジョージアと同様、アメリカ合衆国の利益に平等に資するものだ」との声明の一文は、トランプによる「ディープ・ステート」退治がジョージアの利益に直結するという期待を端的に示している。したがって、私たちはここで、それまでも「グローバル戦争党」というフレーズを用いて唱えられてきた陰謀論が、トランプの大統領就任によって、アメリカ流の陰謀論「ディープ・ステート」と合流した瞬間を目撃していることになる。言い方を変えれば、それまで手を焼いてきた(声明の言葉で)「ローカル戦争党、つまり集合的統一国民運動」や「グローバル戦争党」の撃退を、それらと同類の「ディープ・ステート」の解体を目指すトランプに託し共闘を呼びかけていくなかで、「グローバル戦争党」と「ディープ・ステート」の陰謀論的な近親性に気づき、そしてそのように定義づけたのが、上記の声明なのだろう。
しかしながら、この想像上の共闘は片思いであった(片思いは常につらい)。もちろん、日本をはじめとしてアメリカ以外の国々がトランプ政権の外交政策への対応に苦慮しているのだが、ジョージアもまた、残念ながら、そうした陰謀論だけで繋がれるほど甘くはなかった。2025年5月13日、Facebookの公式ページで、コバヒゼ首相はジョージア語で書かれたトランプへの「公開書簡」を公開した。そのナラティヴを味わうべく、以下に特徴的な箇所を訳出してみたい。
公開書簡
アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ閣下
アメリカ合衆国副大統領 J・D・ヴァンス閣下
数週間前、ジョージア゠アメリカ関係に関連して書簡をお送りした。私の公開の声明が上述の書簡に先立って発表され、そこでは、白紙の状態から具体的な検討を進めることで、ジョージアとアメリカ合衆国とのあいだでの戦略的パートナーシップを更新していくためのジョージア側の用意を表明した。しかしながら、我々の側からのそれら書簡や公開の声明に対する回答を、我々は今日まで受け取っていない。[……]
上述の沈黙はジョージアの人々とジョージアの政府にとって、いくつかの理由から驚くべきものである。
第一に、アメリカ合衆国にとって戦略的意義のある、非常に困難の多い我々の[コーカサス]地域において、ジョージアは既に長年、アメリカ合衆国の最も希望の持てるパートナーである。ジョージアはアメリカ合衆国の最も熱い地点でサポートしており、そのうちイラクとアフガニスタンには、人口1人当たりで最も多くの兵士を派兵した。この2つのミッションに参加するだけでも、我々の小さな国はアメリカ合衆国に25億ドルを節減させたが、これはアメリカ合衆国の予算からジョージアに対して支出された実質的な(!)支援の何倍にも上るものだ(この実質的な支援には、ミへイル・サアカシヴィリ元大統領の体制を救うため、サアカシヴィリが「ディープ・ステート」の命令によってロシアとの戦争を開始した以降の、2008─11年にアメリカ合衆国の予算から割かれた額は計算していない。その実質的な支援には、同様に、アメリカ大使館やUSAID、NED、ソロス財団、その他の流路より、ジョージアにおける急進主義と憎悪感情の喚起のため、革命を企図するため、ジョージア正教会のイメージを貶めるため、宗教的過激派を煽動するため、国家機構を弱体化させるため、ジェンダーやLGBTのプロパガンダを惹起するため、その他類似の目的のために割かれる額を計算していない)。[……]
さらには、ジョージアの副首相や政府の他の幹部に対する、全く理解不能な制裁についての調査も継続中である。彼らは、バイデン政権によって計画され、USAIDの線により資金提供された革命の企図と暴力を効果的に予防した。これ以外にも、数日前にはアメリカ議会が不条理な法律を承認した──いわゆる「メゴバリ法」である[★13]。それはジョージアの人々と、彼らによって選ばれた政府に対して敵対心を露わにするものだ。「メゴバリ მეგობარი」[友達]という単語の意義からして、この法律は、ジョージ・オーウェルのモデルを私たちに想起させる。そのモデルによれば、戦争は平和であり、敵はトモダチである。[……]この法案は、議会のみならず、残念ながら、あなた方の政権に対しても、ジョージアの人々の信頼を損なうものである。ジョージア社会はあなた方の政権を、異なる希望とともにながめていたのだが。
しかしながら、我々の政府は公開の声明において以下の事柄に関して再び楽観論を表明する──あなた方の政権は「ディープ・ステート」の打倒が現実的に可能であり、このことは、ジョージア=アメリカ関係を正常化し、戦略的パートナーシップを復活させることに疑いの余地なく反映されるものである。現実的にも、このことが実現されることに強い希望を抱いている。そうでなければ、バイデン政権という条件において計画された革命的シナリオの実行が継続されるだろう。お伝えしておくと、USAIDとNEDによってトレーニングや資金援助を受けた250人ほどの人物が、今日まで毎日、国の首都の中心の通りに集まっており[★14]、このことは、「ディープ・ステート」が革命計画をまだ棚にしまっていないことを示す、まごうことなき証拠である。
既に示したように、問いは問いを呼ぶにもかかわらず、我々はやはり楽観主義を維持し、「ディープ・ステート」とのあなた方の闘いが誠実なものであり、そしてその「ディープ・ステート」の敗北で終わることを期待している。ジョージア政府は、ジョージア=アメリカ関係が根本から正常化し、我々の国同士で戦略的パートナーシップが復活することを我慢強く期待するものである。
この闘いでの成功を祈念する!
アメリカ合衆国の確立と繁栄を祈念する![★15]
「グローバル戦争党」がここでは完全に「ディープ・ステート」に置き換わっている……という点はさておき、この声明は、ジョージアの政権与党が、反ディープ・ステートの名の下に結託を果たしたと思っていたにもかかわらず、実際には5月の時点まで、トランプ政権とのあいだに首脳クラスの関係構築ができていなかったことを明らかにしている。
ここまで触れてこなかったが、このコンテクストとして、2024年10月26日に行われた国政選挙の不正疑惑と、11月28日にEU加盟交渉のジョージア側からの凍結に対して、首都トビリシの中心部で選挙のやり直しを求めて大規模な抗議集会が連日催されていた(本原稿を執筆している2025年8月下旬まで継続している)[図2・3]。抗議集会への機動隊の暴力的な対応は本邦でも報じられたとおりであり、またジャーナリストをはじめとする抗議者の逮捕が相次いだことで、ジョージアにおける民主主義の後退であると欧米各国は非難し、イヴァニシヴィリをはじめとする与党幹部や裁判官などに対し、ビザの発行停止や銀行口座凍結などの制裁を科した。野党は、不正を理由に選挙結果を認めず、その選挙に基づいて招集された国会で指名された新政権や新大統領をしたがって「非正統」なものであるとみなした。同様に欧米各国の大使もまた、新政権発足後、首相や大臣との面会をしばらくの間控えていたが、そのなかで、3月14日にダニガン在ジョージア・アメリカ大使が先駆けてボチョラシヴィリ外相と面会した[★16]。会談について、ジョージア側は、「両国間に10年以上にわたって構築されてきた戦略的関係は、将来の協力深化のための最良の基礎であることを確認した[★17]」と発表したのに対して、アメリカ側は「トランプ大統領とルビオ国務長官の最優先事項と、また、アメリカ合衆国との関係修繕に向けた真剣な態度を表明するための、ジョージアが越えなければならないステップを説明した[★18]」と発表したが、この時点ですでに見過ごすことのできない温度差が感じられるだろう。与党「ジョージアの夢」にとって、トランプ政権は思い描いていたほどには味方ではなかったのであり、このことが前掲の公開書簡に繋がっている。


書簡の内容そのものについて、「ディープ・ステート」の他にUSAIDやNED、ソロス財団などが陰謀の主体に加えられ、それらがジョージアの反政府デモや革命的シナリオを準備している、というウクライナ侵攻以降繰り返されてきた陰謀論的ナラティヴがまず目につくが、その他に注目したい点が2つある。ひとつは、先の与党声明でも触れたように、「LGBTプロパガンダ」がここでも繰り返し言及されていることであり、もうひとつは、アメリカとの戦略的パートナーシップを強調する際に、イラクやアフガンへの派兵が言及されていることだ。
宗教的理由から、ジョージアではLGBTへの嫌悪が伝統的に強い。プライドパレードが繰り返し襲撃されているほか、最近では、日本でも公開された映画『ダンサー そして私たちは踊った』の2019年のプレミア上映時に、それを阻止しようとしてやはり襲撃が加えられたことも大きな事件であった。こうしたLGBTの権利運動を陰に陽に煽動しているのが西側の支援を受けたNGOであり、それは反政府運動を含めた社会の動揺を狙っている、と考えているのが与党やその支持者である。それゆえ、そうした資金提供等の支援を可視化することを狙ったのが、2024年に提出され可決された「外国の影響の透明性について」の法案であり、メディアやNGOなど非営利団体は、その資金源のうち20%が外国からのものである場合、その旨を登録しなければならない。この法案は「外国エージェント法」とか「ロシア法」と呼ばれたように、自由な政治活動を制限し民主主義を後退させるものとして、大きな反発を呼んだ。
こうした陰謀論的思考は、やはりここ数年で聞かれるようになった、「リベラル・ファシズム」という語に集約される[★19]。個人主義の「リベラル」と全体主義の「ファシズム」という、普通は結びつかないような単語のつながりは、しかし最近参政党が国会に提出した質問主意書に登場する「文化的マルクス主義」と共通の基盤を有するようにも見える[★20]。そこでは、日本において「ジェンダー平等、ダイバーシティ推進、多文化共生、外国人参政権といった一見穏当な政策用語が用いられつつも、その裏側で、家族、国籍、国語、教育内容、歴史観といった国家の独立性や公共秩序の基盤を成してきた制度や概念が見えない形で崩されてきている」ことを指摘しつつ、こうした傾向を「ソフト・トータリタリアニズム(柔らかな全体主義)」と呼んでいる。西側たる日本やアメリカでは「マルクス主義」が陰謀論的仮想敵を非難する言葉になっている一方、そのマルクス主義をまさに経験した東側のジョージアでは、マルクス主義という言葉は使われず、自身の手でそれを打ち負かし、今日までそれに対する勝利を祝祭しているところの「ファシズム」に取って代わっているのはおもしろい気がするが──要するにそれらはただの悪口なのであり、したがって「リベラル」と「ファシズム」が連続しても問題ないのだ──いずれにせよ、ここではリベラルな価値観に対する伝統的な価値観の対立という問題に収斂するように見え、そしてそれは洋の東西を問わず起こっているということなのかもしれない。ここまで首相の言葉ばかり引いてきたから、別の要人の発言を引用しよう。ロナウジーニョ時代のACミランで活躍した元サッカー選手にして現トビリシ市長のカハ・カラゼ(「カラーゼ」としたほうが日本のサッカーファンには通るか)は、2024年12月、「エストニアにおけるジョージア゠エストニア友好議連」の議長が、与党「ジョージアの夢」を支持する発言をしたために解任を求められたことに対して、次のようにコメントしている。
リベラル・ファシズムがジョージアにだけあると考えてはいけない。これはあらゆるところに、ヨーロッパや、一般的に、世界中にも広がっている。異なる見方をもち、真実を言い、彼らのレトリックに従わず、彼らの「メッセージ」に従わないなら、あなたは敵なのだ。あまたの愚かなことを考え出し、時に親露派と呼び、時に「ロシアの利益になぜ奉仕するのか」と言い、時に別の何かを考え出す。これが今日の情況だ[★21]。
異なる意見に対するリベラル派の不寛容で攻撃的な態度がリベラル・ファシズムの意味するところであると一般化するならば、この発言は他方で理解することもそこまで難しくないのかもしれないし、少なくともウクライナ侵攻関連では、日本語Twitter界隈でも似たような議論があった。「リベラル・ファシズム」という語に表明されているのは、NGOを通して欧米(の一部)がLGBTをはじめとするリベラルな価値観をジョージアに植え付けようとすることへの保守派の警戒感であり、そして問題なのは、その語法が陰謀論的であることだ。
こうした「リベラル・ファシズム」への対抗策とされているのは、法制度としては上記の法案であり、社会的には毎年5月17日に記念される「家族の神聖さの日」である。これは2014年にジョージア正教会の主導により始まったものであり、2024年には公式に休日と指定された。この日にはデモ行進が行われるのが通例で、先導するのは聖職者であり、そこに政治家も合流するという、政と教が一体となる行事である。国際的には、5月17日は反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日であるが、これは偶然ではなく、ジョージアで「家族の神聖さの日」が創設される前年、2013年の同日にはLGBT活動家と反対勢力の間で大きな衝突が起こっている。パレードなどの権利運動を「LGBTプロパガンダ」と呼ぶならば、それへのカウンターとしての「反LGBTプロパガンダ」もまた大規模に行われており、そしてそれは一定の支持を得ているのだ。
一方で、もしこうしたリベラルな思想や態度、政治が、ソ連解体後の90年代の内戦と混乱を経て、親欧米路線を歩んできた2000年代以降のジョージア社会の帰結であるとするならば、他方で2000年代はテロとの戦いとグローバリズムの時代でもあった。市民たちが時の大統領を追放し野党候補を大統領に押し上げた2003年のバラ革命はその決定的な瞬間であり、革命により大統領となったサアカシヴィリはその象徴的人物であった。それ以降、ジョージアはコーカサス地域の民主化と自由の旗手であったが、先の公開書簡にあったイラク・アフガン派兵にかんする言及も、この文脈から理解される。サアカシヴィリ政権以降もジョージアは派兵を続け、コーカサス地域におけるアメリカの戦略的パートナーであり続けてきた。
だが、私たちの今日の問題は、そうしたポスト冷戦時代の、ネグリとハートが〈帝国〉と呼んだ状況が(少しずつなのか一気になのかはわからないが)崩れていき、あたかも再び帝国主義的状況が復権しつつあるということであり、そしてジョージアの今日の問題とは、そうした〈帝国〉のシステムに組み込まれることを国是としてきたところ、それが崩れてしまったことで寄る方を失い、行く末を迷っているということなのかもしれない──ロシアとは領土問題を抱え、EUとはもはや敵対し、トランプ政権にはふいにされている。他方で、与党「ジョージアの夢」が親露的にみえるのは、彼らが経済成長を重視し、一帯一路構想に基づいて中国とも接近し、それがひいては権威主義国家との関係強化に繋がっているからだろう。「ジョージアの夢」が、親露であるとの批判に対して、その批判は当たらないと常に主張しているのは正しい。彼らは経済発展を重視した政策を取るという点で一貫しており、それがEU(や日本)からは「親露」に見えるのだ。
日本やアメリカでは、グローバリズムにより国内の製造業が空洞化し、そこで働いていた労働者階級の没落が、成長を享受する都市のリベラルへの反感から、極右思想としばしば結びつく陰謀論を準備したとするならば、ジョージアの陰謀論においては、リベラルへの反感は主としてLGBTの主題において表れるが、他方でグローバリズムの社会・経済的影響はそこまで大きくないだろう。ジョージアは常に世界史の辺境・周縁の小国であり、グローバリズムで産業が空洞化したとか、反対に工場が移転してきたとか、そういう具体的な状況はほぼないと言ってよいはずだ[★22]。むしろ、その背後にあるのは、社会・経済的な理由というよりは、歴史的な影響としてのソ連時代から醸成されてきた反西側感情があるように筆者はにらんでいる。
そのことを端的に示す例として、やや個人的な体験を紹介したい。すでに触れたように、2024年10月の選挙後には抗議者たちが多数逮捕されたが、そのなかにはインターネットメディアの『ネットガゼティ』と『バトゥミ人』の共同創設者であるムズィア・アマグロベリがいる。彼女は抗議運動のなか、警官に囲まれた際に一発の平手打ちを加えた罪で逮捕され、勾留中にハンストを行うなど、抗議活動のある種のシンボルとなった。2025年8月に判決が下り、その微罪(と私は思うが)に対して2年の禁固刑が言い渡された[★23]。逮捕以降、Facebookでは「ムズィア・アマグロベリに自由を」と連帯を示すポストが様々な人から投稿されていたが、筆者も結審の際に投稿したところ、とある「友達」(といっても面識はない)から、「君は、君の国にとって原爆さえ惜しまなかった政治の側にいる。だから、これら全てのことをよく考えろ、でなければ俺たちの国の敬意を失うぞ!」との(ありがたい)コメントが投稿された。要するに、ジョージアの反体制派や野党、またその支持者たちは、日本に原爆を投下した西側のほうにおり、そしてここでそれに連帯を示した私もまた同様だ、ということを言いたいのである。ジョージア(や旧ソ連圏でも同様なのではないかと思うが)では、日本といえばヒロシマ・ナガサキを抱える被爆国であり、そしてその悲惨な戦禍をもたらしたのが米帝である、という形で、アメリカ嫌悪と原爆の問題が一体になって認識されている。これはソ連時代の冷戦プロパガンダに他ならないのだが(だから筆者はこうした時、日本もまた帝国主義的であったと説明するが)、ソ連解体から30年以上経った今でもなお、こうした反応が出てくること自体、ジョージアの陰謀論の冷戦プロパガンダ的源泉を示すものだと言ってよい。
そして、もしジョージアの陰謀論がプロパガンダ的であるならば、それが自然発生的であるというよりは、それを創り出し、育て上げ、利用する主体が存在するということになるだろう。2024年12月5日にレジャバ駐日ジョージア大使が動画メディア「ReHacQ」でひろゆきと対談した際、グローバル戦争党について尋ねられ、それは「比喩」であり、「世界が不安定になっているから、そう言うものに巻き込まれたくないということを、しっかりと国民に植え付ける」ためのものとして(苦し紛れに)説明していた[★24]。ここでの「植え付ける」という言葉が示すのは、まさにそのプロパガンダ的性質に他ならない。大使や大使館は常々、ジョージアに「旧ソ連」という枕詞を使わないよう日本のマスメディアに要請しているが[★25]、この観点からもその主張は少々疑ってもよいのではないだろうか。つまり、ジョージア社会にはソヴィエト精神が今も残っているのだ。
*
今日の陰謀論は、複雑な世の中を簡潔に理解・説明することに快を見出す人間の心理的な機序を原動力に、グローバリゼーションにおいて没落した国内の労働者階級の怒りとか苦しみを代弁する装置として機能している。そうした簡潔化によって物事を理解する過程において、見えない結託を見てしまったり、関係のない事物同士を接続させてしまったりする時に、陰謀論の回路が作動してしまうのだろう。ジョージアにおいて、それは、野党への批判と冷戦時代に由来する西側嫌悪、それに反LGBTなどの保守的価値観がそれぞれに接続するという形であらわれているのではないか。では彼らが何に怒っているかというと、グローバリゼーションの影響というよりは、90年代以降の内戦や2008年のロシアとの戦争からようやく立ち直ってきた経済の成長を維持するために、平和と安定の構築こそが重要であって、例えばロシアとの敵対路線に進むべきではない、という点においてだ。白井聡は、「社会主義の衰退とともに、資本主義は歯止めを失」った時代において、陰謀論を「社会主義に代わって全面的に資本主義を批判しうるツール」だと定義しているが[★26]、ソ連解体後、社会主義から資本主義へと移行したジョージアにおいては、しかしながら「資本主義の全面的批判」という名目は換骨奪胎され──なぜなら資本主義による経済成長路線をとり、与党支持者もそこから多かれ少なかれ経済的利益を得ているから(その代表がオリガルヒである)──陰謀論は、国際政治における仮想敵を、名指しを避けつつ批判するツールになっている。(もっとも、批判の対象となるのは、結果的に西側の資本主義国となるのだが。)
どの国でも、国際政治と国内政治は難しい照応関係にあるが、こと小国ジョージアにおいてはなおさらである。そうした難しい関係を一足飛ばしに説明するものとして陰謀論は機能しているが、その心理を背後で操作しているのが「古い帝国主義」のプロパガンダの名残りであるとするならば[★27]、(仮にこう言うとして)「新しい帝国主義」の時代においてあらわれたジョージアの陰謀論が今のところ示唆するのは、実際のところ、帝国主義への先祖返りにすぎないのかもしれない。いずれにせよ、国際政治の荒波に揉まれながら、ジョージアは存在を続けるしかない。
★1 五月女颯「ほな、戦争したいん?──いまジョージアで何が起きているか」、webゲンロン、2024年12月27日。URL= https://www.webgenron.com/articles/article20241227_01
★2 制裁対象の長男がじつは東京に住んでおり、レジャバ駐日ジョージア大使が秘密裡に面会していたという記事が『週刊文春』(2025年2月13日号)に──スキャンダラスに──掲載されたのは記憶に新しい。
★3 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/733591-irakli-kobaxize-aris-globaluri-omis-partia-romlis-carmomadgenlebic- odiozuri-evroparlamentarebi-arian-mati-ertaderti-mizania-sakartveloshi-gamoicvion-is-rac-ukrainashi-xdeba
★4 同右。以下、[ ]は引用者。
★5 URL=https://nordicmonitor.com/2023/03/erdogan-claims-the-west-failed-to-lure-turkey-into-a-war-against-russia-because-of-his-resistance/
URL= https://english.almayadeen.net/news/politics/erdogan: A-west-wont-be-allowed-to-drive-turkey-into-a-war-wit
★6 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/750614-irakli-kobaxize-arsebobs-globaluri-omis-partia-romelsac-akvs-interesi-ukrainashi-pirveli-pronti-gaxangrzlivdes-da-sakartveloshi-meore-pronti-gaixsnas-kartuli-sazogadoeba-unda-iqos-pxizlad/
★7 URL=https://isfed.ge/geo/blogi/globaluri-omis-partiis-shetqmulebis-teoria-konspiratsiis-satskisebi-saertashoriso-gamotsdileba-da-safrtkheebi なおムディナラゼは、その後国家安全局の長官に就任している。
★8 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/817193-bizina-ivanishvili-globaluri-omis-partia-pirvelad-me-vtkvi-globaluri-omis-partia-imitom-davarkvi-rom-omis-partia-ager-gvqavs-nacionaluri-mozraoba/
★9 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/743846-irakli-kobaxize-globalur-omis-partias-ertaderti-interesi-akvs-es-aris-saakashvilis-gamoshveba-humanitaruli-mosazrebebit-rom-mokmedebdes-saxelmcipo-am-shemtxvevashi-9-atasive-patimari-unda-gatavisupldes
★10 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/759940-irakli-kobaxize-nacmozraoba-lelo-gaxaria-girchi-vashaze-eseni-qvelani-arian-globaluri-omis-partiis-sacodavi-agentebi-gaxariam-imdeni-ubedureba-gaaketa-davalebebit
★11 藤井聡ほか「特集座談会「ディープステート論」の本質を探る」、『表現者クライテリオン』2025年1月号、23頁。
★12 URL=https://www.facebook.com/radioGT92.3/posts/pfbid037hD9BvXn4fa9Nw9AuzfQBqs13EHVh95zP74bZfRCSozvhAH2Hmra6wNkNB4jsGH2l
★13 同法は、中国、ロシア、イランなど反西側の権威主義国家の影響に抗するため、ジョージアの親欧米路線と、それに反する与党関係者への制裁を支持する内容である。URL=Congress. gov. “H. R. 36-MEGOBARI Act.” https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/36
★14 抗議運動のために街頭に出ていることを指している。
★15 URL=https://www.facebook.com/KobakhidzeOfficial/posts/pfbid0MqhknfFsNUVt9scDgrk6jVsDiszWSxn8kipQgqBjLm6WFqS6jcmTwnGytV3mu3vol
★16 ちなみに在ジョージア日本大使は5月8日にジョージア外相と面会し、2027年の国際園芸博覧会への参加を呼びかけた。URL= https://www.facebook.com/EmbassyofJapaninGeorgia/posts/pfbid02MfYs4wZfzniPbnebCu5vHvCQ7VgMvGSN27RtGsxMityzZ5bbd64VhcfCcv1dHGZTl
★17 URL=https://www.facebook.com/mfageorgia/posts/1187809713345662
★18 URL=https://www.facebook.com/usingeo/posts/1075387431297856
★19 URL=https://1tv.ge/lang/en/news/pm-liberal-fascism-equalises-people-in-distorted-form-we-must-stop-its-spread-in-georgia/
★20 神谷宗幣「共産主義及び文化的マルクス主義の浸透と国家制度への影響に関する質問主意書」、参政党ウェブサイト、2025年8月5日。URL=https://sanseito.jp/news/n4282/
★21 URL=https://www.interpressnews.ge/ka/article/825537-kaxa-kalaze-ar-ipikrot-rom-liberaluri-pashizmi-mxolod-sakartveloshia-es-qvelgan-gavrcelebulia-evropashic-da-zogadad-msoplioshic
★22 他方、ジョージアにおいてグローバリズムは「移民」という形で現れており、多くのジョージア人が移民として国外へ流出している。もっとも、皮肉なことに、そうした人々の多くは与党に対し批判的であり、2024年10月の選挙でも、多くの在外公館で与党は圧倒的な敗北を喫している。
★23 服役中、オンラインで日本語の授業を受け、平仮名・片仮名が読めるようになったらしい。
★24 「【ひろゆきvsジョージア大使】暴徒襲撃…野党指導者続々逮捕…ジョージア緊迫が意味する重大な世界の危機【世界戦争党とは?】」、RehacQ─リハック─、YouTube、2024年12月5日。該当箇所は33分55秒から35分ごろ。URL=https://www.youtube.com/watch?v=rORpa3bZbxw 強調は筆者による。
★25 URL=https://x.com/GeorgiainJapan/status/1498518452654723073
★26 白井聡「資本主義リアリズムの時代における陰謀論の必然」、『表現者クライテリオン』2025年1月号、71頁。傍点原文。
★27 ここでは紙幅の都合で詳しく触れられないが、もちろんジョージアの陰謀論にはロシアの情報戦という側面もあるだろう。



五月女颯
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