愛について──符合の現代文化論(番外編) 意味はどこに宿るのか──ゲルハルト・リヒター展評|さやわか

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初出:2022年7月31日刊行『ゲンロンβ75』
 ゲルハルト・リヒターは、世界的に有名なドイツの芸術家だ。現代アートについて学ぶと、必ず名前が出てくる。そのせいだろうか、今回の大規模個展は大盛況だった。僕は展覧会初日の開館時間に行ったのだが、平日の朝にもかかわらず、多くの観客が詰めかけていた。100人くらいはいただろうか。

 リヒターは近年「もう絵は描かない」と宣言した。本当に筆を折るのかはわからないが、90歳と高齢でもあるし、この展覧会は彼のキャリアを総ざらいするのに格好の機会となった。120もの展示作品も、1960年代から2020年代にいたるまでの、彼の作風の変遷を余さずパッケージした内容になっている。

 ただし展覧会の構成としては、特に作家の来歴を順に追うようなものになってはいない。「どこから鑑賞してもよい」ということなのだろう。しかし、やはり今回の目玉、エントランスをくぐってすぐ左の展示室にある《ビルケナウ》を最初に見るのをお薦めしたい。作品数が膨大なのは無論ありがたいが、いささか鑑賞に疲れた後になってからこの大作を見るのは、もったいない気がする。

さやわか

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。著書に『僕たちのゲーム史』、『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』、『世界を物語として生きるために』(いずれも青土社)、『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。編著に『マンガ家になる!』(ゲンロン、西島大介との共編)、マンガ原作に『キューティーミューティー』、『永守くんが一途すぎて困る。』(いずれもLINEコミックス、作画・ふみふみこ)がある。
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