ひろがりアジア(4) 義務感に支えられた成功――独裁国家ラオスの徹底した新型コロナウイルス対策|山田紀彦

初出:2021年2月19日刊行『ゲンロンβ58』
東南アジア大陸部に位置するラオスは、徹底した対策により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を抑えている。新型コロナウイルスが世界で猛威をふるい始めて1年が過ぎたが、2021年2月9日現在、国内の感染者数は45人、死者はゼロである。また2020年4月11日に19人目の市中感染者が確認されて以降[★1]、新たな感染者はすべて海外からの帰国者や入国者となっている。政府が徹底した対策を講じ、多くの国民がそれにしたがった結果、すでに人々の「日常」は戻り、大勢での会食や数百人が参加する結婚式なども行われるようになった。
政府主導の感染対策が徹底された背景には、この国の政治体制が大きく影響している。ラオス人民革命党による一党独裁体制が続くラオスでは、政策実施における上意下達のメカニズムが整備されている。すなわち、国民の権利を制限する感染症対策が実施されても、それが受け入れられる下地が社会にあったのだ。そして何よりも、当初は強制力に支えられていた政府のロックダウン命令に、国民が徐々に正当性や権威を見出したことが大きい。そのため国民の消極的義務感は、いつしか積極的な義務感へと転換していった。
本稿では、ラオスにおけるCOVID-19の拡大状況やそれに対する政府の対応を紹介しつつ、同国が感染拡大の封じ込めに成功している理由について、政治的要因を中心に考えてみたい。

ラオス全土の地図。アジア経済研究所編『アジア動向年報2020』アジア経済研究所、2020年、241頁をもとに編集部作成
政府主導の感染対策が徹底された背景には、この国の政治体制が大きく影響している。ラオス人民革命党による一党独裁体制が続くラオスでは、政策実施における上意下達のメカニズムが整備されている。すなわち、国民の権利を制限する感染症対策が実施されても、それが受け入れられる下地が社会にあったのだ。そして何よりも、当初は強制力に支えられていた政府のロックダウン命令に、国民が徐々に正当性や権威を見出したことが大きい。そのため国民の消極的義務感は、いつしか積極的な義務感へと転換していった。
本稿では、ラオスにおけるCOVID-19の拡大状況やそれに対する政府の対応を紹介しつつ、同国が感染拡大の封じ込めに成功している理由について、政治的要因を中心に考えてみたい。

ラオスのおかれた状況と政府の警戒感
政府は中国で新型コロナウイルスが確認された当初から警戒感を高めた。背景には、世界が経験したことのない未知のウイルスであったという他に、ラオスの地理的条件や医療体制の未整備など、いくつかの理由がある。
ラオスは周囲を5カ国に囲まれた内陸国である。北部ルアンナムター県ボーテンにある中国との国境では、1日に約400台の車が両国間を通過している[★2]。中国人観光客数は2019年に100万人を超え、自家用車で国境を渡ってくる人も多い。また、タイとは約1800キロメートル、ベトナムとは約2000キロメートル以上の国境を接しており、公的に定められた国際国境だけでなく、地域住民だけが合法/非合法に通過できるローカルな国境がいくつもある。つまり隣国との陸路による人の往来が多く、出入国管理が徹底されていない地域もあるため、新型コロナウイルスがいつ入ってきてもおかしくない状況にあった。実際、2020年1月末の春節休暇期間中にラオスを訪れた中国人観光客や[★3]、3月上旬にタイから陸路でラオスを訪れた観光客が、帰国後に新型コロナウイルスに感染していたことが発覚している[★4]。


人々の食習慣も感染拡大が心配された要因のひとつだった。レストランなどを除き、一般的にラオスではお皿に盛られた料理を取り分けることなく、各自が直箸や手で食べることが多い。例えば、主食であるモチ米が入ったお櫃には複数の人の手が入り、大きなひとつのボウルに入ったスープを各自が自分のレンゲですくって飲む。飲み会や結婚式ではお酒の回し飲みをすることもある。したがって、食事を共にした誰かが感染していれば、それがすぐに周囲に拡大しうる。
また、医療体制に対する懸念もあった。2003~2004年にアジアでSARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザが拡大した際、ラオス国内には検査能力がなく、感染が疑われる患者の検体を海外に送る必要があった[★5]。その経験から、2012年にフランスの支援でパスツール研究所が設立され、現在では同研究所を含め複数の機関でコロナウイルスの検体検査を行えるようになっている[★6]。とはいえ医療レベルはいまだに低く、病気を患い検査や手術が必要となった場合、多くの人は国境を渡りタイの病院に行く。自国の医療体制に対する人々の信頼は低い。
さらに、「陸の孤島化」による日常生活への影響も心配された。ラオスを含め周辺国で感染が拡大した場合、どの国にとっても国境封鎖が感染拡大防止の有効な手段となる。仮に国内でパンデミックが起きた場合、ラオスの医療レベルとキャパシティを考えれば、周辺諸国に支援要請を行う必要性がでてくる。しかし国境が封鎖されれば十分な支援は受けられない。またラオスは石鹸やシャンプーなどの日用品から、ジュース、お菓子、調味料など飲食料品の多くを、タイ、中国、ベトナムからの輸入に依存している。物流が滞れば人々の日常生活に多大な影響がでる。実際にコロナ禍で一部商品の価格は上昇した。
以上から、ラオスは COVID-19が容易に拡大する環境にあり、いちど感染が拡大すれば社会生活が危機的状況に陥る恐れがあったのである。
政府の対応は早かった。2020年1月7日、保健省は在ラオス世界保健機構(WHO)事務所と新型コロナウイルスに関する協議を開始した[★7]。以降、保健省とWHOは頻繁に情報交換を行なっている。そして2月3日にはCOVID-19対策特別委員会が設置された[★8]。
一方、社会の警戒感はそこまで高まっていなかった。1月中旬には一部の私立教育機関が自主休校を決定し、マスクを着ける人も現れ始めた。また国境では入国者の体温測定も始まった。実際、筆者が2020年2月2日にラオスに入国した際、空港ではサーモグラフィーカメラを使って入国者の体温を測定していた。とはいえその日の夜に出席した友人の結婚披露宴では数百人が会場に集まっており、お酒の回し飲みをしている様子もみられた。国内で感染者が確認されていないこともあり、日常にさほど変化はなかった。
また、医療体制に対する懸念もあった。2003~2004年にアジアでSARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザが拡大した際、ラオス国内には検査能力がなく、感染が疑われる患者の検体を海外に送る必要があった[★5]。その経験から、2012年にフランスの支援でパスツール研究所が設立され、現在では同研究所を含め複数の機関でコロナウイルスの検体検査を行えるようになっている[★6]。とはいえ医療レベルはいまだに低く、病気を患い検査や手術が必要となった場合、多くの人は国境を渡りタイの病院に行く。自国の医療体制に対する人々の信頼は低い。
さらに、「陸の孤島化」による日常生活への影響も心配された。ラオスを含め周辺国で感染が拡大した場合、どの国にとっても国境封鎖が感染拡大防止の有効な手段となる。仮に国内でパンデミックが起きた場合、ラオスの医療レベルとキャパシティを考えれば、周辺諸国に支援要請を行う必要性がでてくる。しかし国境が封鎖されれば十分な支援は受けられない。またラオスは石鹸やシャンプーなどの日用品から、ジュース、お菓子、調味料など飲食料品の多くを、タイ、中国、ベトナムからの輸入に依存している。物流が滞れば人々の日常生活に多大な影響がでる。実際にコロナ禍で一部商品の価格は上昇した。
以上から、ラオスは COVID-19が容易に拡大する環境にあり、いちど感染が拡大すれば社会生活が危機的状況に陥る恐れがあったのである。
COVID-19拡大前の社会状況
政府の対応は早かった。2020年1月7日、保健省は在ラオス世界保健機構(WHO)事務所と新型コロナウイルスに関する協議を開始した[★7]。以降、保健省とWHOは頻繁に情報交換を行なっている。そして2月3日にはCOVID-19対策特別委員会が設置された[★8]。
一方、社会の警戒感はそこまで高まっていなかった。1月中旬には一部の私立教育機関が自主休校を決定し、マスクを着ける人も現れ始めた。また国境では入国者の体温測定も始まった。実際、筆者が2020年2月2日にラオスに入国した際、空港ではサーモグラフィーカメラを使って入国者の体温を測定していた。とはいえその日の夜に出席した友人の結婚披露宴では数百人が会場に集まっており、お酒の回し飲みをしている様子もみられた。国内で感染者が確認されていないこともあり、日常にさほど変化はなかった。


しかし世界的に感染が広がった2月中旬から徐々に雰囲気が変わり始めた。政府は予定していた国民体育大会などの大規模イベントを中止し、中国への航空路線を一部停止するなど対策を強化した。3月からはラオス=韓国間の航空便も停止され[★9]、感染流行国からの入国者には14日間の自己隔離措置もとられた[★10]。3月に入り近隣諸国で感染が拡大すると、ローカルな国境や一部の国際国境が閉鎖され[★11]、19日にはすべての教育機関が休校となった[★12]。
3月中旬からは国内での感染拡大の可能性がさらに高まった。すでに感染が拡大していたタイから大量の出稼ぎ労働者が帰国したのである。タイへのラオス人出稼ぎ労働者数は約20万人から30万人以上ともいわれている。ラオスの月額最低賃金は110万キープ(現在のレートで約1万2000円)だが、タイでは県によって違いはあるものの1日300バーツ以上(現在のレートで約1030円)である[★13]。言葉も文化も類似のタイで働く障壁は低く、数十年来、多くのラオス人がタイで働いている。3月20日から4月13日までにタイから帰国した人の数は約11万人に上り[★14]、国境では帰国者の「密」状態が発生した。帰国者は各種収容施設で14日間隔離されたが、なかにはスポーツ競技場でテント生活を送るなど、劣悪な環境におかれた者もいた[★15]。幸い、これらの帰国者から感染者はでていない。
感染者ゼロに対して一部国際メディアから疑問を呈する声も上がり始めるなか[★16]、3月24日、ついにラオスで初となる2人の感染者が確認された。そして29日までに感染者数は9人に増えた[★17]。社会の危機感が一気に高まり始めたのである。
ロックダウンと経済への影響
感染者数は一桁台であったが、政府が発した命令によってラオスは3月30日から4月17日までロックダウンに入った[★18]。ロックダウン期間は最終的に5月3日まで延長され、非常に厳しい措置がとられた。
まず、生活必需品の買い物などを除き、不要不急の外出は禁止となった。物流トラックの通過を除き国境は閉鎖され、無許可での他地域への移動も禁止となり、主要幹線道路には検問所が設置された。さらに10人以上が集まる祭事や宗教行事なども禁止され、4月に予定されていたラオス正月のイベントも中止となった[★19]。レストランやカフェは営業を許可されたが、厳しい感染予防対策をとることが条件に課されたため、実質的にはテイクアウトのみの営業がほとんどであった。とはいえ政府からの協力金や補償金があるわけではない。あらゆる娯楽施設とともに、食品・医療関係以外の工場も閉鎖され、多くの労働者が無給での休業を強いられた。

当初、人々はロックダウン措置をそこまで厳格なものとは捉えていなかったようである。もちろん、不要不急の外出を控える人もいたが、これまで通り外出する人も多かった。一党独裁体制とはいえ、必ずしも政府の命令が中央から末端の村まで厳格に実施されるとは限らない。「上に政策あれば下に対策あり」と中国でもいうが、中央からの物理的距離が離れるほど、政策が形式的にしか実施されないことは多々ある。
しかし政府命令では、違反者に対して軍や警察による厳格な対応が規定されていた。さらに4月6日、人民革命党中央書記局から全国の党組織に対して、COVID-19対策の徹底について指導を強化するよう命令が発出された[★20]。これは政府命令とは別のものだ。強制力をちらつかせる政府と党指導部の2つの命令に、各地の行政機関は強い意志を感じとったのだろう。独自に厳しい措置を運用した県では、軍や警察が街中をパトロールするようになった。またマスク着用なしの外出に罰金が課されたり[★21]、政府の命令にしたがわずに大勢で新年のパーティーを開催した若者や[★22]、SNSにコロナ関連のフェイクニュースを投稿した人が拘束されたりした[★23]。


徹底した対策を国民に命じる一方で、政府は感染者に関する詳細な情報提供を行なった。一般的に独裁体制では情報が隠されることが多い。しかし初の感染者が確認された3月24日以降、保健省は休日を含め毎日のように記者会見を行い、感染者の情報や外国人の入国者数とその内訳などを公開した。その情報には、感染者の性別、年齢、住んでいる村の名前、勤務先、感染者の症状や行動履歴など個人情報も含まれていた。
しかし、個人情報の公開に対して社会から大きな批判はでなかった。ラオスは「匿名性のない社会」ともいわれ、街を歩けば必ずといってよいほど知り合うに会う狭い社会である。つまり個人の行動が特定されやすく、人々のプライバシーの観念も薄い。個人の携帯電話番号をFacebookの公開タイムラインでやりとりすることもある。年齢や住んでいる村、また勤務先情報が公開されれば、周囲の人々は容易に当該人物を特定でき、その情報はあっという間にSNSで拡散する。個人情報の公開はむしろ、政府が感染源と感染者の行動を特定できており、適切な対応がとられている証として、人々に安心感すら与えた。
ロックダウン期間を経て感染拡大が落ち着くと、厳しい措置は徐々に緩和された。そして6月10日に、首相が新型コロナウイルス感染拡大第一波に対する勝利宣言を行なった[★24]。政府は当初、一部チャーター機の乗り入れを認めたが、入国した外国人に複数の感染者がでると、2020年12月にはチャーター機の乗り入れと、外交官や援助関係者などを除いた外国人の入国を原則禁止した[★25]。これはラオス人を配偶者にもつ外国人も例外ではないし、たとえCOVID-19対策特別委員会の許可を得て入国を認められても、14日間の厳格な隔離措置がとられている。また12月中旬にタイの海鮮市場で複数の感染者が確認されると、タイからの生鮮・冷凍海鮮食品の輸入が禁じられた[★26]。2021年2月現在もラオスは徹底した対策を講じており、国境も原則的に閉鎖されたままである。
感染拡大が抑えられた一方で、経済は大打撃を受けた。主要輸出産業である縫製産業はEUへの輸出が75〜80%低下し、成長産業であった観光は国境封鎖により約7億ドルの損失があったと試算されている[★27]。雇用形態にある労働者のうち約11%が観光関連産業に従事しており、影響は大きい。
また、大量の出稼ぎ労働者が帰国したこともあり、失業率は20%まで増加した。その帰国の影響を受けて、全150万世帯のうちの9%が受領していた海外送金額は、約1億2500万ドル減少したとみられている[★28]。海外送金受領世帯は家計の60%以上を送金に依存しており、彼らにとって大幅な収入減となる[★29]。こういった状況を受け、今後ラオスの貧困者数は、約12万人から21万人増えるという予測もある[★30]。
ロックダウン解除後、経済活動は徐々に再開し始めた。すでに飲食産業はほぼ通常に戻っているが、観光など一部の産業は苦戦を強いられている。政府は観光産業を支えるため、感染拡大が収束した2020年7月から日本の「Go Toトラベル」のような国内旅行キャンペーンを実施し[★31]、人々も積極的に国内旅行を行なった。しかし日本のような補助金などもなく、損失額をカバーするには至ってない。ロックダウン中は納税期限の延期や公共料金の減額措置がとられ、また一部労働者には生活補填として50万キープ(現在のレートで約5500円)が支給されたが、困窮者の生活を十分に支える措置とは言い難い。
しかし、個人情報の公開に対して社会から大きな批判はでなかった。ラオスは「匿名性のない社会」ともいわれ、街を歩けば必ずといってよいほど知り合うに会う狭い社会である。つまり個人の行動が特定されやすく、人々のプライバシーの観念も薄い。個人の携帯電話番号をFacebookの公開タイムラインでやりとりすることもある。年齢や住んでいる村、また勤務先情報が公開されれば、周囲の人々は容易に当該人物を特定でき、その情報はあっという間にSNSで拡散する。個人情報の公開はむしろ、政府が感染源と感染者の行動を特定できており、適切な対応がとられている証として、人々に安心感すら与えた。
ロックダウン期間を経て感染拡大が落ち着くと、厳しい措置は徐々に緩和された。そして6月10日に、首相が新型コロナウイルス感染拡大第一波に対する勝利宣言を行なった[★24]。政府は当初、一部チャーター機の乗り入れを認めたが、入国した外国人に複数の感染者がでると、2020年12月にはチャーター機の乗り入れと、外交官や援助関係者などを除いた外国人の入国を原則禁止した[★25]。これはラオス人を配偶者にもつ外国人も例外ではないし、たとえCOVID-19対策特別委員会の許可を得て入国を認められても、14日間の厳格な隔離措置がとられている。また12月中旬にタイの海鮮市場で複数の感染者が確認されると、タイからの生鮮・冷凍海鮮食品の輸入が禁じられた[★26]。2021年2月現在もラオスは徹底した対策を講じており、国境も原則的に閉鎖されたままである。
感染拡大が抑えられた一方で、経済は大打撃を受けた。主要輸出産業である縫製産業はEUへの輸出が75〜80%低下し、成長産業であった観光は国境封鎖により約7億ドルの損失があったと試算されている[★27]。雇用形態にある労働者のうち約11%が観光関連産業に従事しており、影響は大きい。
また、大量の出稼ぎ労働者が帰国したこともあり、失業率は20%まで増加した。その帰国の影響を受けて、全150万世帯のうちの9%が受領していた海外送金額は、約1億2500万ドル減少したとみられている[★28]。海外送金受領世帯は家計の60%以上を送金に依存しており、彼らにとって大幅な収入減となる[★29]。こういった状況を受け、今後ラオスの貧困者数は、約12万人から21万人増えるという予測もある[★30]。
ロックダウン解除後、経済活動は徐々に再開し始めた。すでに飲食産業はほぼ通常に戻っているが、観光など一部の産業は苦戦を強いられている。政府は観光産業を支えるため、感染拡大が収束した2020年7月から日本の「Go Toトラベル」のような国内旅行キャンペーンを実施し[★31]、人々も積極的に国内旅行を行なった。しかし日本のような補助金などもなく、損失額をカバーするには至ってない。ロックダウン中は納税期限の延期や公共料金の減額措置がとられ、また一部労働者には生活補填として50万キープ(現在のレートで約5500円)が支給されたが、困窮者の生活を十分に支える措置とは言い難い。
なぜ国民は政府にしたがったのか?
自由権が制限され、経済が悪化したにもかかわらず、国民は政府の感染拡大防止策にしたがい、最終的には党や政府への信頼は高まった。なぜだろうか。経済・社会構造と政治体制から考えてみたい。
経済・社会構造的な理由のひとつは、国民の多くが現金に依存しない生活を送れることである。ラオスは後発開発途上国だが食べ物が豊富にあり、飢えることはほぼない。人口約712万人の約7割が農村に住んでおり、労働人口の約4割は農林水産業従事者である[★32]。以前に比べて生活に現金が必要になってきたとはいえ、農村の人々はコメや野菜を育て家畜を飼育する。また山や川で野鳥、野生動物、魚なども捕獲する。農村では現金に頼らなくても多くの食料を確保できるのだ。たとえ都市部の住宅でも、庭にマンゴーやバナナなどの果樹が生えている。1990年代後半のアジア通貨危機のときも、農村は大きな影響を受けずにセーフティーネットとして機能した。ただ海外送金受領世帯の多くは農村地域の住民であり、経済的影響を被ったことは間違いない。
もうひとつは、国家に頼らない親族や血縁の助け合い(スワイカン)である。国家収入は少なく、慢性的な財政赤字もあり、社会主義を標榜していても国家が生活の面倒をみてくれないことを国民は理解している。したがって経済的問題が起きたとき、人々は血縁、親族、知人などを頼るのが常である。ラオスの人々は何か問題が起きたとき、必ずといってよいほど「スワイカン」という言葉を口にする。また、ほとんどのラオス人夫婦は共働きであり、かつ両親や親戚などを含めた拡大家族で暮らしており、一世帯に複数の収入源がある。
このような経済・社会構造により経済的影響をある程度吸収できたため、政府への大きな批判は起きなかった。その意味で政府は幸運だったともいえる。しかし社会から大きな批判や不満が表出しなかったのには、経済・社会構造以上に政治体制が大きく影響していると考えられる。主に2つの要因を指摘できる。
第1は、党=国家体制の統治メカニズムである。ラオスでは人民革命党が国家の基本方針を決定し、政府はその方針を具体的に実施する機関と位置づけられている。つまり政府のCOVID-19拡大防止策は党の方針でもある。そして党方針の実施を確実にするため、以下の図のように行政ラインに沿って党組織が設置され、行政を外側から指導・管理している。また、すべての国家機関内部にも党組織が設置され、国家を指導・管理する。さらに首相、大臣、地方首長から各省庁や地方行政機関の管理職まで、国家機関の主要幹部はほぼ全員党員である。党組織が国家機関の外部・内部から政策の実施を指導・管理し、党と国家の人員が一体化していれば、党の方針は国家によって確実に実行に移されることになる。すべての政策が厳格に実施されているわけではないが、党や政府はいざというときにこのメカニズムを通じて命令を徹底させることができる。そして今回はそのケースに該当する。

しかし以上の統治メカニズムが機能するには、党や政府に正当性や権威が備わっている必要がある。いくら独裁体制であっても、暴力や抑圧的手段のみで政策を実施することは難しい。暴力と抑圧に依存した統治は国民の反発を生みコストがかかる。したがって独裁体制とはいえそれらは最終手段であり、支配者は国民の協力を得るために自らの支配に正当性や権威を付与していく。支配の正当性とは支配者と被支配者の相互作用によって生み出され、支配者を正しいとみなす被支配者の信念によって、支配−被支配関係の内面から支えられるものである[★33]。とはいえ、もちろん独裁体制であるため、それが潜在的な抑圧的手段に下支えされていることは否めない。
今回のCOVID-19対策は、そのような「上から」の正当化と権威づけによって始まった。政府は徹底したロックダウンの実施のため、強制力を伴う命令を発出し、強い意志を示した。党からも、徹底した実施に関する命令が出された。それにより党と政府はロックダウン措置に正当性と権威を付与したのである。そして党と政府の意志を汲み取った地方政府は強制力を拡大させ、国民は命令にしたがう義務があると感じるようになった。
これは独裁体制下の統治者と被統治者が共有する規範ともいえる。例えばラオスでは人民革命党体制への批判はご法度だが、政府への批判は許容される場合がある。しかし過度の政府批判を行なった者は当局に拘束され、刑事罰が課される。そこに明確な基準はないが、多くの国民はどこにボーダーラインがあり、どの場合に暴力や抑圧装置が作動するかを理解している。今回のロックダウン措置の実施に対しても、このボーダーラインが設定されたのである。
強制力を伴う措置により国民の自由権は制限され、経済的補償などもほぼなかったにもかかわらず、感染拡大が抑えられると政府への支持は高まった。6月10日に行われた首相による勝利宣言後、SNSなどでは政府に対する称賛の声が相次ぎ、ナショナリズムが高揚した。それは、強制力を伴った上からの正当化や権威づけが、国民が下から付与するものに転換したことを意味した。もちろん独裁体制であるため、その裏には常に潜在的な暴力や抑圧がある。不利益を被る可能性があれば、人々が命令にしたがうのは当然だろう。しかし政府がCOVID-19の拡大を抑え込んだことで、結果として自らの正当性を高めたことは事実である。それは一党独裁体制の安定にとって大きな成果といえる。
独裁体制であれば国民の自由権を制限し、徹底した感染防止対策をとることが可能である。しかし独裁体制だからCOVID-19の拡大を抑えられるわけではない。独裁体制であっても、国民の協力がなければ政策を目的通りに実施することは難しい。
ラオス政府が発した命令は強制力をもっており、それは独裁体制だからこそなし得たことかもしれない。しかしどのような政治体制であっても、命令を下す政府がいちど正当性と権威をもてば、命令の遵守に対する義務感が生じる。最初は消極的な義務感かもしれないが、目にみえる効果が現れれば政府の正当性と権威はさらに高まり、それが国民の積極的な義務感を喚起することもある。ラオスが経験したのは、まさにそのような状況であった。
党や政府にとって経済回復が今後の大きな課題であることは間違いなく、その対応と成果によっては高まった正当性や権威も揺らぐだろう。とはいえ感染拡大封じ込めが当面の課題である限り、ラオス国民は今後も政府が講じる厳しい措置に協力することは間違いない。
これは独裁体制下の統治者と被統治者が共有する規範ともいえる。例えばラオスでは人民革命党体制への批判はご法度だが、政府への批判は許容される場合がある。しかし過度の政府批判を行なった者は当局に拘束され、刑事罰が課される。そこに明確な基準はないが、多くの国民はどこにボーダーラインがあり、どの場合に暴力や抑圧装置が作動するかを理解している。今回のロックダウン措置の実施に対しても、このボーダーラインが設定されたのである。
強制力を伴う措置により国民の自由権は制限され、経済的補償などもほぼなかったにもかかわらず、感染拡大が抑えられると政府への支持は高まった。6月10日に行われた首相による勝利宣言後、SNSなどでは政府に対する称賛の声が相次ぎ、ナショナリズムが高揚した。それは、強制力を伴った上からの正当化や権威づけが、国民が下から付与するものに転換したことを意味した。もちろん独裁体制であるため、その裏には常に潜在的な暴力や抑圧がある。不利益を被る可能性があれば、人々が命令にしたがうのは当然だろう。しかし政府がCOVID-19の拡大を抑え込んだことで、結果として自らの正当性を高めたことは事実である。それは一党独裁体制の安定にとって大きな成果といえる。
消極的な義務感から積極的な義務感へ
独裁体制であれば国民の自由権を制限し、徹底した感染防止対策をとることが可能である。しかし独裁体制だからCOVID-19の拡大を抑えられるわけではない。独裁体制であっても、国民の協力がなければ政策を目的通りに実施することは難しい。
ラオス政府が発した命令は強制力をもっており、それは独裁体制だからこそなし得たことかもしれない。しかしどのような政治体制であっても、命令を下す政府がいちど正当性と権威をもてば、命令の遵守に対する義務感が生じる。最初は消極的な義務感かもしれないが、目にみえる効果が現れれば政府の正当性と権威はさらに高まり、それが国民の積極的な義務感を喚起することもある。ラオスが経験したのは、まさにそのような状況であった。
党や政府にとって経済回復が今後の大きな課題であることは間違いなく、その対応と成果によっては高まった正当性や権威も揺らぐだろう。とはいえ感染拡大封じ込めが当面の課題である限り、ラオス国民は今後も政府が講じる厳しい措置に協力することは間違いない。
★1 2020年4月12日に行われたCOVID-19対策特別委員会の記者会見での報告。 URL=https://www.covid19.gov.la/index.php?r=site/openpdf&id=5ef28948cc14ed6a80f8c796df83e9ac.pdf&link=4fJ6SkvD8XaA8IrtgwPCjS(2021年1月23日閲覧)。
★2 “Strict checks for trucks at Laos' Boten Checkpoint before going into China.” The Star, 20 June. 2020. URL=https://www.thestar.com.my/news/2020/06/20/strict-checks-for-trucks-at-laos039-boten-checkpoint-before-going-into-china(2021年1月18日閲覧)。
★3 ルアンパバーン県にある中国領事館の発表。ラオスのインターネットメディアPakadのFacebookページ、2020年2月3日投稿記事。URL=https://www.facebook.com/pakaad/posts/2557791567798867(2021年1月19日閲覧)。
★4 Eugene Whong. “Thai Travelers Who Visited Laos Likely Carried COVID-19 Across the Mekong.” Radio Free Asia, 18 Mar. 2020. URL=https://www.rfa.org/english/news/laos/coronavirus-roundup-0318-03182020102654.html(2021年1月19日閲覧)。
★5 石上盛敏「ラオスにおける寄生虫の現状と課題:マラリアについて」、『Modern Media』第65巻10号、2019年、202-211頁。URL=http://1.33.172.30/modern_media/backnumber/pdf/2019_10/003.pdf (2021年1月15日閲覧)。
★6 “ສາທາຢືນຢັນມີເຄື່ອງມືທັນສະໄໝວິເຄາະຫາເຊື້ອໂຄວິດ-19.”[保健省はコロナウイルスの検体検査を行える近代機器を保有していると保証]Lao Economic Daily, 19 Feb. 2020. URL=https://laoedaily.com.la/2020/02/19/72388/(2021年2月8日閲覧)。
★7 吉岡桂子「(Behind the News ニュースの深層)中国と地続き、小さな内陸国の挑戦 コロナ対策にWHOと二人三脚」、「The Asahi Shimbun GLOBE+」、2020年8月13日。URL=https://globe.asahi.com/article/13626788 (2021年2月9日閲覧)。
★8 ラオス人民革命党機関紙Pasason, 4 Feb. 2020.
★9 Taejun Kang. “Lao Airlines to Stop Flights to South Korea over Coronavirus Concerns.” The Laotian Times, 26 Feb. 2020. URL=https://laotiantimes.com/2020/02/26/lao-airlines-to-stop-flights-to-south-korea-over-coronavirus-concerns/ (2021年1月28日閲覧)。
★10 山田健一郎「(地域・分析レポート)感染症対策に成功も、財政・債務への打撃が深刻:ラオスでの新型コロナ禍(前編)」、「JETRO」、2020年。URL=https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/ed309899e8c49217.html(2021年1月21日閲覧)。
★11 例えばラオス北西部にありベトナムと国境を接しているフアパン県は2020年3月12日に通達を公布し、県内10カ所のローカル国境を閉鎖した。“ດ່ວນທີ່ສຸດ! ຫົວພັນແຈ້ງປິດ10ດ່ານປະເພນີຊົ່ວຄາວຫ້າມປະຂາຂົນເຂົ້າ-ອອກ.” [緊急!フアパン県はローカル国境10カ所の閉鎖を通達、人々の出入国を禁止]Lao Economic Daily, 12 Mar. 2020. URL=https://laoedaily.com.la/2020/03/12/74091/(2021年1月21日閲覧)。 国際国境の閉鎖についてはPhetphoxay Sengpaseuth. “Laos orders ten entry points to shutdown.” Vientiane Times, 16 Mar. 2020.を参照。URL=http://www.vientianetimes.org.la/freeContent/FreeConten_Laos_orders_53.php(2021年1月21日閲覧)。
★12 Lao Youth Radio FM 90.0 MhzのFacebookページ、2020年3月18日投稿記事。URL=https://www.facebook.com/fm90laos/posts/2885591548200753(2021年2月8日閲覧)。
★13 「《労使》最低賃金の引き上げ、20年元日から適用」、「NNA ASIA」、2019年。URL=https://www.nna.jp/news/show/1985930(2021年1月21日閲覧)。
★14 “ຍອດຜູ້ຕິດເຊື້ອໂຄວິດ-19ຢູ່ລາວບໍ່ເພີ່ມຂຶ້ນຍັງຢູ່ທີ່19ກໍລະນີ.”[ラオスにおける新型コロナウイルス感染者数は合計19人のままで増加していない]KPL, 14 Apr. 2020. URL=http://kpl.gov.la/detail.aspx?id=51689(2021年1月21日閲覧)。
★15 Eugene Whong. “Lao Migrants Returning from Thailand Stuck in Overflowing Quarantine Camps.” Radio Free Asia, 15 Jul. 2020. URL= https://www.rfa.org/english/news/laos/migrants-07152020212152.html(2021年1月30日閲覧)。
★16 例えば以下の記事である。Nathan Thonpson. “Claims of a Coronavirus-Free Laos Are Probably Fiction.” Foreign Policy, 20 Mar. 2020. URL=https://foreignpolicy.com/2020/03/20/laos-coronavirus-free-claims-probably-fiction/(2021年1月18日閲覧)。 またタイのニュース番組のアナウンサーがラオスで感染者がゼロなのは病院が近代的でないことに理由があると発言し、後日、在バンコクのラオス大使館を訪問し謝罪を行うこともあった。Lao National RadioのFacebookページ、2020年3月20日投稿記事。URL=https://www.facebook.com/lnrlao/posts/2453199511657262(2021年1月21日閲覧)。 ラオス語とタイ語は同じ語群に属し、文化も類似しているため、ラオスとタイは「親戚同士」と表現されることが多い。しかしタイ人は自分たちが兄、ラオスを弟とみなし蔑むことがあり、このような問題は両国間でしばし起きる。
★17 COVID-19対策特別委員会の記者会見での報告。URL=https://www.covid19.gov.la/index.php?r=site/openpdf&id=4a7366648835fe0e79ad71a6b3d3eebb.pdf&link=xZHy1zg1mSH-UYyg6qVF1v(2021年1月25日閲覧)。
★18 “ດ່ວນ! ນາຍົກອອກຄໍາສັ່ງ18ຂໍ້ຕ້ານໂຄວິດ-19ເນັ້ນທຸກຄົນປະຕິບັດຢ່າງເຂັ້ມງວດ.”[緊急!首相が新型コロナウイルス感染症防止策に関する18項の命令を公布、すべての人の厳格な実施を強調]Lao Economic Daily, 29 Mar. 2020.
★19 ラオスは旧暦5月(新暦4月)に新年を迎え、通称「水かけ祭り」が行われる。街中では不特定多数の人々がお互いに水をかけあい、友達同士でパーティーをする。つまり、もっとも感染が拡大しやすい状況になる。
★20 書記局とは党書記長を補佐する機関である。同局から発出される命令は実施の徹底が求められるという意味合いが含まれている。
★21 例えば中部のサワンナケート県である。“ຢູ່ແຂວງສະຫວັນນະເຂດເຕືອນ!! ອອກເຮືອນບໍ່ໃສ່ຜ້າອັດປາກຖືກປັບໃໝ.”[サワンナケート県での注意!マスク未着用の外出に罰金]LaoNews.net, 9 Apr. 2020. URL=https://laonews.net/4485/(2021年1月22日閲覧)。
★22 Lao National RadioのFacebookページ、2020年4月16日投稿記事。URL=https://www.facebook.com/lnrlao/posts/2476597695984110(2021年1月23日閲覧)。
★23 ABC Lao NewsのFacebookページ、2020年4月11日投稿記事。URL=https://www.facebook.com/ABClaos/posts/2344001389236420(2021年1月23日閲覧)。
★24 Souksakhone Vaenkeo, “Lao government announces victory over Covid-19.” Vientiane Times, June 11, 2020. URL=https://www.vientianetimes.org.la/freeContent/FreeConten_Lao111.php(2021年1月22日閲覧)。
★25 在ラオス日本大使館ホームページ。URL=https://www.la.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00321.html(2021年1月22日閲覧)。
★26 Phetphoxay Sengpaseut. “Laos bans import of Thai seafood after Covid-19 outbreak.” Vientiane Times, 25 Dec. 2020. URL=https://www.vientianetimes.org.la/freeContent/FreeConten_Laos251.php(2021年1月22日閲覧)。
★27 The World Bank. Lao PDR Economic Monitor: Lao PDR in the time of COVID-19. The World Bank, 2020. URL=http://pubdocs.worldbank.org/en/962271591369090988/Lao-Economic-Monitor-June-2020-final.pdf(2021年1月25日閲覧)。
★28 Ibid. 世帯数についてはກະຊວງແຜນການ ແລະ ການລົງທຶນ ສູນສະຖິຕິແຫ່ງຊາດ[計画・投資省国家統計センター]. ບົດລາຍງານຜົນການຂຶ້ນບັນຊີບ້ານ ແລະ ບັນຊີຄົວເຮືອນປະຈຳປີ 2019 [2019年度村及び家屋登録調査結果報告書]. 2020.
★29 The World Bank. op. cit.
★30 Ibid.
★31 山田健一郎「(ビジネス短信)ラオス、国内旅行キャンペーンを推進へ」、「JETRO」、2020年。URL=https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/07/b0f3c77055df4238.html(2021年1月25日閲覧)。
★32 Ministry of Planning and Investment, Lao Statistics Bureau. Survey Finding Report: Lao PDR Labour Force Survey 2017. 2018.
★33 Muthia Alagappa. “Introduction,” Political Legitimacy in Southeast Asia: The Quest for Moral Authority. Muthia Alagappa ed. Stanford: Stanford University Press, 2020.;マックス・ウェーバー『支配の社会学 I』、世良晃志郎訳、創文社、1960年。


山田紀彦
やまだ・のりひこ/日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員。専門は政治を中心とするラオス地域研究、権威主義体制研究。主な著作は『ラオスの基礎知識』(めこん、2018年)、『独裁体制における議会と正当性――中国、ラオス、ベトナム、カンボジア』(編著、アジア経済研究所、2015年)等。
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