ゲンロンサマリーズ(4)『一般意志2.0』要約&レビュー|入江哲朗
初出:2012年5月8日刊行『ゲンロンサマリーズ #1』
東浩紀『一般意志2.0──ルソー、フロイト、グーグル』、講談社、2011年11月
要約
レビュー
ゼロ年代以降の思想系の本と言えば、難しい専門用語をバリバリ駆使してマニアックな議論をチマチマ展開しているような、「思想オタク」向けの本が多かった。そんななか「筆者はこれから夢を語ろうと思う」という一文で始まるこの本は、「一般意志」というルソーの概念をテーマにしている点でまぎれもない思想書でありながら、同時に18世紀のヨーロッパと現代の日本を見渡そうというスケールのデカさを持っている。読むとまさしく未来への「夢」が広がってきて、ワクワクさせられる本だ。
さらに大事なのは、話を単なる「夢物語」に終わらせないように、その未来を実現するための具体的な提案もなされていること。なにしろ、国会をニコ生中継しコメントを議員にリアルタイムで見せるだけでも、一般意志2.0を政治に活かすことができるというのである(「そんなバカな」と思った人は、だまされたと思っていますぐ読んでみてほしい!)。
やろうと思えば明日からもできるその一歩が、「夢」の実現に繫がる。本書がより多くの人に読まれ、東のメッセージが世界中に拡散していくことによって、その実現の「確率」は間違いなく高まってゆくはずだ。
『ゲンロンサマリーズ』は2012年5月から2013年6月にかけて配信された、新刊人文書の要約&レビューマガジンです。ゲンロンショップにて、いくつかの号をまとめて収録したePub版も販売していますので、どうぞお買い求めください。
・『ゲンロンサマリーズ』ePub版2012年5月号
・『ゲンロンサマリーズ』Vol.1-Vol.108全号セット
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入江哲朗
1988年生まれ。東京外国語大学世界言語社会教育センター講師。専門はアメリカ思想史および表象文化論。映画批評もしばしば執筆。著書に『火星の旅人──パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』(青土社、2020年、表象文化論学会賞奨励賞受賞)、『オーバー・ザ・シネマ 映画「超」討議』(共著、石岡良治+三浦哲哉編、フィルムアート社、2018年)など、訳書にジェニファー・ラトナー゠ローゼンハーゲン『アメリカを作った思想──五〇〇年の歴史』(ちくま学芸文庫、2021年)など。
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