近所試論

横浜関外について

2026年10月16日

関内と関外

 ここに住んでもう10年目になった。

 どこに住んでるんですかと訊かれるといつもちょっと困る。

「横浜です」とざっくり言ってすませることもあれば、これなら知っているだろうと思って「関内です」と言ってみたり、それだとちょっと見栄を張っているような気もしてしまって「黄金町です」と言うときもある。でも黄金町だって、住所としても違うし、たしかに京急の黄金町駅も自宅から近いが、本当の最寄り駅は横浜市営地下鉄の阪東橋駅だ。

 だから本当は、「関外に住んでます」と言えればいいのにと思う。しかし関外という地名は存在しない。過去に存在したこともないし、いまは通称として用いられることも少ない。

 そもそも関内も地名ではないし、地名であったこともないのだが、関内駅は現存する。横浜駅からJR根岸線で南にひと駅で桜木町、もうひと駅で関内だ。中華街や赤レンガ倉庫など、横浜の顔となっているようなスポットが近く、関内と言えばだいたい、駅から港までの栄えたエリアを漠然と指していると思っていいだろう。JR関内駅を東(つまり海側)に出ると目の前にDeNAベイスターズのホーム、横浜スタジアムがある。街を行き交う人々のユニフォームで今日はカープ戦なのかとわかったりする。スタジアムに隣接するBASEGATE横浜関内という、ホテル、オフィスビル、商業施設が一緒になった大型複合施設が2026年の3月にできたことを皮切りに、周辺の再開発が進んでいる。しかしいまだにここはGATE=関なのだろうか。

2026年10月24日刊行『ゲンロン19』

福尾匠

92年生。批評家、哲学者。博士(学術)。著書に『眼がスクリーンになるとき』(河出文庫)、『非美学』(河出書房新社、紀伊國屋じんぶん大賞2025受賞)、『ひとごと』(河出書房新社)、『置き配的』(講談社)など。
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