「ヨシミツくんの6000人の元カノ」解題

第8回ゲンロンSF新人賞受賞作

2026年10月16日

 さまざまなSFの中でも、ループものは、日本でもっとも人気のあるサブジャンルのひとつ。リセットものとかリプレイものとか死に戻りとか、いろんな呼び名やパターンがあるが、要するに登場人物が同じ時間を何度もくりかえすという物語類型だ。筒井康隆の短編「しゃっくり」みたいに同じ10分間が無限にくりかえされる話もあれば、バカリズム脚本のドラマ『ブラッシュアップライフ』みたいに人生を何度もやり直す話もある。記憶までリセットされてしまうとループしていることが認識できないので、ほとんどのループものでは主人公(たち)の記憶が保持されるのがお約束。ゲーム的リアリズムで考えれば、人生における選択はリセットしてやり直せるほうがふつうなので、そのことを前提にしたループものが流行るのは必然かもしれない。その人気はいまに始まったことではなく、2012年にはこのサブジャンルだけに焦点を絞った浅羽通明『時間ループ物語論』(洋泉社)も刊行されている。

2026年10月24日刊行『ゲンロン19』

大森望

1961年、高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』、劉慈欣『三体』、テッド・チャン『息吹』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。
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