巨大機械の政治認識論 惑星的なものにかんする覚書(5)|ユク・ホイ(訳=伊勢康平)

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2025年5月10日刊行『ゲンロン18』

 


★1 Ernst Kapp, Elements of a Philosophy of Technology, trans. Lauren K. Wolfe (Minneapolis: University of Minnesota Press, 2018), p. 234.
★2 Yuk Hui, Machine and Sovereignty (Minneapolis: University of Minnesota Press, 2024).
★3 Hans Blumenberg, The Legitimacy of the Modern Age, trans. Robert M. Wallace (Cambridge MA: MIT Press, 1985), p. 8. 〔ハンス・ブルーメンベルク『近代の正統性Ⅰ──世俗化と自己主張』、斎藤義彦訳、法政大学出版局、1998年、9頁。訳は英文より。〕
★4 Carl Schmitt, The Leviathan in the State Theory of Thomas Hobbes, trans. George Schwab and Erna Hilfstein (Chicago: Chicago University Press, 2008), p. 99. 〔カール・シュミット『リヴァイアサン──近代国家の生成と挫折』、長尾龍一訳、福村出版、1972年、69頁。訳は英文より。〕
★5 Ibid., p. 63. 〔同上、100頁。訳は英文より。〕
★6 Carl Schmitt, “Der Gegensatz von Gemeinschaft und Gesellschaft als Beispiel einer zweigliedrigen Unterscheidung: Betrachtungen zur Struktur und zum Schicksal solcher Antithesen” (1960), in Estudios jurídico-sociales: homenaje al profesor Luis Legaz y Lacambra (Santiago de Compostela: Universidad de Santiago de Compostela, 1960), pp. 165-178.
★7 Chang Che, “The Nazi Inspiring China’s Communists,” The Atlantic, December 1, 2020. URL=https://www.theatlantic.com/international/archive/2020/12/nazi-china-communists-carl-schmitt/617237/ 〔ここに引かれているのは会員登録が必要な有料記事なので、現代中国におけるシュミット受容を解説する日本語の論考をひとつ代わりに紹介しておく。王前「中国における国家主義的思潮の行方」、愛知大学現代中国学会編『中国21 Vol. 60 特集 中国現代思想』、東方書店、2024年、165-189頁。〕

☆1 ルイス・マンフォードのいう巨大機械メガマシンとは、強大な権力と官僚機構によって組織化され、統御される機械的なシステムのこと。もっとも原初的な形式としては、古代エジプトのピラミッドの建設事業のような、標準化された「人間部品」の大規模な動員が挙げられる。マンフォードによると、自動機械の発展と普及により、現代のメガマシンは「人間部品」と「機械部品」が絡み合った複雑な社会的システムになっているという。詳細は以下を参照。ルイス・マンフォード『機械の神話──技術と人類の発達』、樋口清訳、河出書房新社、1971年、第九章「巨大機械の設計」。
☆2 カテコーンkatechonとは、「抑えているもの」を意味する神学的概念。終末をもたらす「不法の者」すなわち反キリストの力を抑える存在のこと。カテコーンが取り除かれると終末が訪れ、キリストが再臨するとされている。のちにシュミットは、秩序を維持し、外敵を抑制する政治的権威のことをカテコーンと呼んだ。なお、『ゲンロン14』所収の本連載第1回(63頁訳注4)でより詳しい説明を行なっているので、そちらも参照のこと。また、ホイのこの文章や、直後のレオ・シュトラウスへの言及は、おそらく新反動主義者への批判を兼ねたものと思われる。詳細は以下の論考を参照。ユク・ホイ「新反動主義者の不幸な意識について」、伊勢康平訳、『0-eA journal vol. 1 加速する東洋/Accelerating the East』、2023年、52-67頁。
☆3 この点については本連載第4回で言及されている。『ゲンロン17』、155頁および157頁の訳注4を参照。
☆4 1641年に刊行されたデカルトの『第一哲学についての省察』には、6人の学者からの批判と、それに対するデカルトの応答が「反論と答弁」として収録されている(翌年に刊行された第二版には第7の反論と答弁が追加された)。そのうちホッブズは「イギリスの或る著名な哲学者」として第三の反論を執筆している。邦訳は以下を参照。ルネ・デカルト『増補版 デカルト著作集2』、所雄章ほか訳、白水社、2001年、207-240頁。また、ちくま学芸文庫版の『省察』(山田弘明訳、2006年)には、「反論と答弁」は収録されていないが同書の刊行経緯を含む詳細な解説が付されており、参考になる。
☆5 ボロメオの環とは、絡みあう3つの輪で形成される図形のこと。柄谷行人が資本、ネーション、国家の関係を説明するために用いたことで知られる。詳しくは本連載第4回(『ゲンロン17』、159頁訳注6)を参照。
☆6 以下を参照。Philip Mirowski, More heat than light: Economics as social physics, Physics as nature's economics (New York: Cambridge University Press, 1989). なお、該当の記述は冒頭の献辞にある。

ユク・ホイ

エラスムス大学ロッテルダムの哲学教授。著書に『デジタルオブジェクトの存在について』(ミネソタ大学出版、未邦訳)、『中国における技術への問い——宇宙技芸試論』(アーバノミック、邦訳はゲンロン)、『再帰性と偶然性』(ローマン&リトルフィールド、邦訳は青土社)、『芸術と宇宙技芸』(ミネソタ大学出版、未邦訳)など。著作は十数カ国語に翻訳されている。2014年より「哲学と技術のリサーチネットワーク」を主宰。2020年よりバーグルエン哲学・文化賞の審査委員をつとめる。 Professor of philosophy at the Erasmus University Rotterdam, author of several monographs that have been translated into a dozen languages, including On the Existence of Digital Objects(University of Minnesota Press), The Question Concerning Technology in China: An Essay in Cosmotechnics (Urbanomic), Recursivity and Contingency (Rowman & Littlefield), and Art and Cosmotechnics (University of Minnesota Press). Hui has been the convenor of the Research Network for Philosophy and Technology since 2014 and a juror of the Berggruen Prize for Philosophy and Culture since 2020.
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