絶滅は問いかける――99.9%の生きものは絶滅!? コロナ流行のいま考える、人類の生き残り戦略!!|ゲンロン編集部

ゲンロンα 2020年5月20日配信
5月15日、「絶滅」をテーマにしたイベントがゲンロンカフェで行われた(会場は無観客で有料動画配信のみ)。登壇者は『わけあって絶滅しました。』『ざんねんないきもの事典』の丸山貴史と、『理不尽な進化』の吉川浩満。『世界一受けたい授業』への出演や親子向けの講演なども行ってきた丸山は、人文書をフィールドとする吉川とは異なる層の人々に向けて、「絶滅」を語ってきた。「絶滅」は子どもから大人までひきつける、射程の長いテーマなのだ。トークはどんなところに行き着いたのか。その様子を紹介する。(ゲンロン編集部)
絶滅を物語る
『わけあって絶滅しました。』は、生物が自らの絶滅理由を語る構成を取っている。この一人称のアイデアを絶賛する吉川は、『アンナ・カレーニナ』の冒頭の文章を引き合いにだした。「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」とトルストイがいうように、不幸にも絶滅してしまった生物からみれば、それぞれの絶滅に固有の物語があるはずだと。

人間が意図する絶滅
スティーブンイワサザイは、人間が意図せず絶滅させてしまった例だが、人間は特定の生物の絶滅を目的とすることもある。こうした意図的な絶滅は、「根絶」と呼ばれる。今年7月刊の『も~っとわけあって絶滅しました。』で取り上げる、ミヤイリガイと天然痘の根絶を丸山が語る。

人間は絶滅に責任をもちうるか
人間は、ウイルスや微生物に感情移入ができないし、クジラとハエを同列に考える人はまれだろう。ピーター・シンガーの動物解放論のような論理構築とはべつに、生物保護の判断には、感情が大きなファクターになっている現実があると、吉川はいう。ある生物を絶滅させたくないという考えの裏にあるのは、この生物が見られなくなるのはいやだという素朴な感情かもしれないと、丸山も指摘した。 他の生物に人間とまったく同じ権利を与えることはできないし、すべての生物を保護するというのも不可能だ。しかし、他の生物の絶滅には一切干渉しないというのも極端だろう。その間でどのような線を引くのか。絶滅に対して、なにをなすべきなのか。人間の能力と責任が、議論の焦点となった。

丸山貴史×吉川浩満「99.9%の生きものは絶滅!? コロナ流行のいま考える、人類の生き残り戦略!!──ベストセラー『わけあって絶滅しました。』の丸山貴史氏に、『理不尽な進化』の吉川浩満氏が聞く」
(番組URL=https://genron-cafe.jp/event/20200515/)
