居住の藤子・F・不二雄論
序論
1 ドラえもんはなぜ、押し入れに寝ているのか?
令和の今なお人気で、アニメ映画も毎年のようにヒットしている国民的人気漫画『ドラえもん』のドラえもんは、のび太少年の家の押し入れに寝泊まりしている。
それはいつからだろう?
漫画内のあるとき、こういう出来事をもって押し入れを寝場所と定めた、というような話を読んだ記憶がない。本論執筆に際し調べたが、やはり出てこなかった。
ドラえもんはあるときから突然、押し入れで寝泊まりしていた。1969年の連載開始から約2年後に発表された短編「夜の世界の王さまだ!」(小学四年生1971年12月号[◆1])においてである。
このとき前段として、「ぼく、今日から押し入れで寝るね」と宣言するとか、家の人に「ドラえもんは押し入れで寝なさい」と命ぜられるといったやり取りは描かれなかったし、その後も特に言及されていない。いきなり押し入れで寝ていたし、我々読者もまたそれを自然なことと受け止めた。
我々はいろんなことを「自然に」受け止める。
2026年10月24日刊行『ゲンロン19』

ブルボン小林
72年生。おもにゲームとマンガをテーマとするコラムニスト。著書に『マンガホニャララ』(中公文庫)、『ぐっとくる題名』(中公新書ラクレ)、『グググのぐっとくる題名』(朝日出版社)、『ザ・マンガホニャララ』(クラーケン)、『有名人の愛読書、読んでみました。』(中央公論新社)など。

長嶋有
72年生。作家。2001年「サイドカーに犬」で文學界新人賞を受賞しデビュー。02年「猛スピードで母は」で芥川賞、07年『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞、16年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞を受賞。著書に『七、八月のストローク』(講談社)、『夕子ちゃんの近道』(創元文芸文庫)、『ルーティンズ』(講談社文庫)など多数。





