ゲームの想像力は「記憶の政治」を乗り越えるのか──さやわか×東浩紀×上田洋子「いま、ソ連をSFにするとはなにか!」イベントレポート

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webゲンロン 2023年7月20日配信
 2023年6月14日にゲンロンカフェで行なわれた、さやわか氏、東浩紀、上田洋子によるイベント「いま、ソ連をSFにするとはなにか!──批評家とロシア文学者が語る『Atomic Heart』」のイベントレポートを公開します。(GPT-3.5+ゲンロン編集部) 
  
さやわか×東浩紀×上田洋子「いま、ソ連をSFにするとはなにか!──批評家とロシア文学者が語る『Atomic Heart』」 
URL=https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20230614
 このイベントでは、批評家のさやわかと東浩紀、ロシア文学者の上田洋子により、『アトミックハート』とロシアについて会話がなされている。『アトミックハート』というゲームは、1950年代のパラレルワールドのソ連を舞台にしたSFゲームであり、ウクライナ政府がロシアとの関係を理由に発売中止を要求したことでも話題になった。 

 登壇者たちは、まず、ロシア文学者とゲーム専門家が参加するこのイベントのユニークさについて語る。続いて、さやわかがゲームの概要を紹介するスライドを示し、『アトミックハート』に影響を与えた『フォールアウト』や『バイオショック』などのゲームが紹介される。登壇者たちはゲームのリリースをめぐる論争についても言及し、開発チームにも注目する。 

 ゲームプレイではさやわかが巧みに操作を行う。東と上田がゲームに描かれているロシア文化について、服装、建築、芸術などから分析する。上田は、ゲーム内で使用されているロシア語を観察し、ゲーム内のポスターや広告、新聞記事を読み上げる。東は、ゲーム内に見られる科学技術の使用やモチーフから、ソビエト連邦における科学の重要性を指摘する。 

 

 登壇者たちは、ゲームの世界の奥深さとリアリズムを高く評価し、それがいかにソビエト連邦へのノスタルジーを呼び起こすかを指摘している。とりわけ重要なのは、記念碑や噴水の存在から、ロシアの戦争の歴史や記憶の政治などである。上田は、ゲームに登場するさまざまな記念碑のデザインから、旧ソ連各地に見られる「無名戦士の墓」などの戦争記念碑を紹介する。 

 建物のデザインも話題となり、モスクワのスターリン主義建築である「セブン・シスターズ」などが言及される。上田は、建物の手すりやスロープ、床のフローリングやリノリウム、冷蔵庫や水の自販機など、ゲームのデザインにおける細部へのこだわりについてコメントしている。大理石やステンドグラスの使用、星や原子力のマークなど、ゲーム中に見られる特定のシンボルやイメージの意味も議論された。 

 ソ連へのノスタルジーとゲームの関係は、イベントの重要な論点である。討議では、ゲームがいかにソ連の文化、建築、イデオロギーの要素を取り入れ、ロシア人のもつ過去への郷愁を呼び起こすかが議論された。さやわかは主人公の記憶喪失という設定に注目し、このゲームのエンディングが重要なのではないかと問題提起した。 

 もうひとつの重要な論点は、ソ連SFの歴史との結びつきである。上田は1935年のソ連映画『宇宙旅行』を紹介し、東はソ連SFの伝統や精神がゲームの中に受け継がれていると指摘する。上田はロシアのSFファンダムの様子が紹介され、SF的な想像力が政治に取り込まれている状況や、文学と政治の距離、平和についてが議論された。 

 全体として、このイベントは、ソ連を舞台とするゲームの視覚的要素とロシアの文化や歴史、思想とのつながりについて詳細な分析を提供している。会話はカジュアルなトーンで、各人がゲームについての意見を話している。参加者は終始、洞察に満ちた視点を提供し、示唆に富んだ会話を繰り広げている。ゲーム研究者もロシア研究者も必見のイベントである。

【人間によるあとがき】 
 今回はゲンロンカフェ史上初のゲーム実況&解説イベントだったのですが、そんなアツさはAI(GPT-3.5)の学習範囲には含まれていません。だから淡々とした内容のまとめになりました。もう一言つけ加えると、たぶんAIは「ゲーム実況」という概念もよく分かっていないはず。だから「右に行こう」という発言も、「この像はレーニンじゃないか?」という発言も、ひとしく拾い上げて要約に含めてしまいます。 
 だから編集は大変だった……という愚痴はさておき、人間の視点から、今回のイベントのポイントをもうすこし書き足してみます。 
 ひとつは、AIも書いていますが、とにかくゲームの「細部」にこだわっていること。街のポスターから、ミュージアムの展示、さらには放置されたガラスボトルの中身まで、作中に出てくるソ連的な要素をとことん観察していきます。おそらく『アトミックハート』についてこれほど深く細かく分析したものは世界のどこにもないはずです。とにかく、上田さんの知識と愛とソ連の「壁」がアツい!それを引き出す、さやわかさんの鮮やかなゲームプレイと東さんの鋭い質問力にも要注目です。 
 もうひとつは、SF的な想像力と政治の結びつき。イベントの後半で紹介されるロシアSFの置かれている状況と、だからこそ『アトミックハート』に批判が生じたということは、いま生じている戦争や分断を考えるためにきわめて重要な指摘です。いっけんマニアックなゲーム実況&解説イベントに見えるかもしれませんが、じつはゲームをプレイした先に、「いま、ソ連をSFにするとはなにか!」というタイトルの答えが、とても重要な問題として浮かび上がってくるのです。(植田将暉)
さやわか×東浩紀×上田洋子「いま、ソ連をSFにするとはなにか!──批評家とロシア文学者が語る『Atomic Heart』」 
URL= https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20230614

植田将暉

1999年、香川県生まれ。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程在籍。専門は憲法学、「自然の権利」の比較憲法史。ゲンロン編集部所属。
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