ウクライナの中の戦争 祖国か、神か──戦争がウクライナの正教徒に強いる選択(3)|高橋沙奈美
webゲンロン 2023年4月3日配信
「コラボレーター(裏切者)」への攻撃
前回まで見てきたように、戦争が始まって、ウクライナ正教会は祖国の「コラボレーター(裏切者)」であるというイメージがメディアによって世論に定着した。しかし、当事者であるウクライナ正教会からすれば、2014年に始まったドンバスでの戦争以来、ウクライナ愛国主義を前面に押し出し、救援物資の寄付や配布、国内避難民・社会的弱者の保護といった社会貢献活動に力を尽くしてきた。それどころか、2022年5月には公会(教会会議)を開催して、教会法上正式に認められたロシア正教会との結びつきを否定するなど、教会にとって可能な限り手を尽くした。にもかかわらず、ウクライナ正教会は政府と社会から「裏切られ」ようとしていた。今回からの読者のために、ウクライナにおける正教会事情について、簡単に説明しておこう。ウクライナ正教会とは、ロシア正教会によって自治権を与えられた地方教会である。ソ連解体に伴うウクライナ独立に対応する形で成立した。この教会は国内最大規模の教区教会数を誇り、ロシアとの結びつきも強かった。これに対抗して、2019年にウクライナ政府が世界総主教(コンスタンティノーポリ)に要請して成立したのが、新正教会である。
1917年の二月革命で突如として退位を余儀なくされたロマノフ朝最後の皇帝ニコライ二世は、「周囲はこれ裏切り、怯懦、まやかしばかり」と書き残した。ウクライナ正教会が追い込まれた立場は、確かにニコライ二世のそれに通じるところがあるかもしれない。ソ連崩壊後、聖人として崇敬されているそのニコライ二世のイコンを所持することは、今やウクライナ正教会がロシア世界を宣伝していることの証拠として、十分に検挙の材料となる[★1]。
なお、ウクライナ正教会がここまで窮地に追い込まれた背景として、マスメディアの力が非常に大きかったことが指摘できる。ウクライナ正教会に批判的な論調を展開するのは、「ウクライナ・プラウダ」、「1+1」 、「Ukrinform」、「ラジオ・リバティ」、「5チャンネル」、「LB.ua」など、いずれも大規模で社会的影響力の大きなメディアである。加えて「BBC」、「APF通信」などの国際メディアも、現地ジャーナリストの報道はウクライナ正教会批判に偏りがちである。
一方、ウクライナ正教会を擁護し、その権利侵害についての報道を行うのは、ウクライナ正教会が直接運営するメディア(府主教庁や修道院などが運営する公式サイトやSNS)がメインである。そのほかにも「第一コサック」や「正教ジャーナリスト連盟」などがあるが、これらは正教会を中心とした問題に特化した番組であり、その影響力は極めて限定的である。それぞれのYouTubeチャンネル登録者数を比較してみると、「1+1」が294万人、「5チャンネル」が151万人、「ラジオ・リバティ」が124万人であるのに対し、「第一コサック」は25万6千人、「正教ジャーナリスト連盟」は6万1700人と、その差は歴然としている。
しかし、2022年12月、ある番組の放送内容に神への冒瀆があったとして、オヌフリー府主教はついに声を上げた。問題となったのは、ゼレンスキー大統領が創設者の一人に名を連ね、自身もかつてよく出演していた「95区」という番組である。芸人たちはウクライナ正教会の聖職者たちに対する嫌疑をジョークにした。さらに、「司祭の顔に唾を吐くのは20フリヴニャ、SUV車(聖職者が乗る高級車の意味と思われる―引用註)に聖句を釘で打ち付けるのは50フリヴニャ、ウクライナからモスクワ総主教座を追い出すのはプライスレス!」と、ウクライナ正教会へのヘイトを煽った。また、キリスト教の三位一体の神への信仰を揶揄して「ウクライナではロシアの父、モスクワの聖神、バンカーの子(バンカーとはドイツ語由来の言葉で要塞化した地下壕のこと。プーチン大統領を暗喩するインターネット・ミーム―引用註)の活動が禁じられています」などと茶化した[★2]。
これに対し、オヌフリー府主教は以下のメッセージを公表した[★3]。
一方、ウクライナ正教会を擁護し、その権利侵害についての報道を行うのは、ウクライナ正教会が直接運営するメディア(府主教庁や修道院などが運営する公式サイトやSNS)がメインである。そのほかにも「第一コサック」や「正教ジャーナリスト連盟」などがあるが、これらは正教会を中心とした問題に特化した番組であり、その影響力は極めて限定的である。それぞれのYouTubeチャンネル登録者数を比較してみると、「1+1」が294万人、「5チャンネル」が151万人、「ラジオ・リバティ」が124万人であるのに対し、「第一コサック」は25万6千人、「正教ジャーナリスト連盟」は6万1700人と、その差は歴然としている。
しかし、2022年12月、ある番組の放送内容に神への冒瀆があったとして、オヌフリー府主教はついに声を上げた。問題となったのは、ゼレンスキー大統領が創設者の一人に名を連ね、自身もかつてよく出演していた「95区」という番組である。芸人たちはウクライナ正教会の聖職者たちに対する嫌疑をジョークにした。さらに、「司祭の顔に唾を吐くのは20フリヴニャ、SUV車(聖職者が乗る高級車の意味と思われる―引用註)に聖句を釘で打ち付けるのは50フリヴニャ、ウクライナからモスクワ総主教座を追い出すのはプライスレス!」と、ウクライナ正教会へのヘイトを煽った。また、キリスト教の三位一体の神への信仰を揶揄して「ウクライナではロシアの父、モスクワの聖神、バンカーの子(バンカーとはドイツ語由来の言葉で要塞化した地下壕のこと。プーチン大統領を暗喩するインターネット・ミーム―引用註)の活動が禁じられています」などと茶化した[★2]。
これに対し、オヌフリー府主教は以下のメッセージを公表した[★3]。
長年にわたり、TVチャンネル「1+1」はウクライナの正教会と信者を組織的に中傷してきました。私たち信者は自分の不完全さを自覚するものであり、私たちに向けられた真っ赤な嘘である非難や攻撃に応じてこなかったのです。
しかし、2022年12月7日にYouTubeで「95区」スタジオ[……]が放映したような神と信仰に対する公然たる嘲りと侮辱(冒瀆)を目にした時、私たちのキリスト者としての良心はこれ以上沈黙することを許しませんでした。[……]これはもはや教会だけの問題ではなく、神への信仰に関わる問題であり、それゆえにわが国のキリスト教徒の宗教的感情を傷つけるものです。[……]
神の存在を信じる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。しかし、わが国の市民であるキリスト教徒を貶めることは、ウクライナの法と憲法に違反するものであり、宗教的憎悪を煽るものです。私たちは皆、独立した民主的なウクライナのために現在戦っています。市民の一部が、迫害や嫌がらせ、敵のイメージを作り出すことは許されないことです。私たちは皆、法の前に平等です。いかなる主張や非難も証拠に基づくべきであり、法的な場で解決されなくてはなりません。[……]
この恥ずべき放送について公式に謝罪し、これをメディア空間から削除することを求めます。それがなされない場合、私たちはこれをウクライナ正教会の何百万もの信徒の魂に対する宣戦布告とみなし、しかるべき措置を取る準備があることを伝えておきます。
オヌフリー府主教からの非難は、法治国家の一市民の言葉として極めて妥当と思われる。この翌日には、ウクライナ正教会の代表者が記者会見を開いて、ネガティヴ・キャンペーンに対する反論を行った[★4]。しかし、その言い分がいかに正しかろうと、ウクライナ正教会の声を取り上げるメディアはほとんどいなかった[★5]。冒瀆的発言に対する謝罪もなかった。メディアばかりではない。政界にも財界にも、そして宗教研究に携わる研究者の間でも、ウクライナ正教会を支持しようという人間はほとんどいなくなっていた。皆、ウクライナ国内の重要な地位からは追放されたからだ。
軍服とバンドゥーラに占拠された聖地
キーウのランドマーク、ペチェルシク大修道院は中心街から少し離れたドニプロ川の河岸の丘陵地帯に広がっている。およそ28ヘクタールもの広大な敷地を持つこの大修道院は、キーウ・ルーシがまだ栄えていた11世紀半ばに創設された。「ペチェール」とは洞窟を意味する。この修道院のもっとも聖なる場所は、修道士たちが長い年月をかけて掘った洞窟なのだ。
洞窟の中には、ルーシが輩出した聖人たちの不朽体=ミイラが安置されている。ルーシにおいては聖人の遺体は腐敗せず、芳香を放つと信じられていたため、「不朽体」と呼ばれている。ドストエフスキーの長編小説『カラマーゾフの兄弟』で、三男のアリョーシャが敬愛するゾシマ長老の遺体から悪臭が漂ってくるというというエピソードが有名だ。もちろん、洞窟の中では何世紀も昔の聖人たちの不朽体が厳かに安置されている。中世ロシア史を伝える書物の中でしか出会うことのない聖人たちの棺を、この洞窟の中で見つけることは感動的ですらある。いわば、はるか遠い過去と自分が生きる現在の時空間が地続きであることを実感させられるのだ。
ルーシがビザンツから東方正教を受け入れた時代からの歴史の証人であり、数多の聖人の不朽体を納めるこの大修道院は、ウクライナのみならず「ロシア世界」随一の聖地である。無神論が推奨されたソ連時代には、この大修道院は二度にわたって閉鎖され(1929年と1961年)、歴史・文化保護区(заповедник)となっていた。しかし、1988年にその一部が正教会に返還されると、「上層」が博物館として、洞窟のある「下層」が修道院として利用されることに決まった[図1][図2][★6]。大修道院を国から「貸与」されたのは、現在のウクライナ正教会である。貸与された当時、大修道院の建物の多くは廃墟と化しており、修道士たちの最初の仕事はそれらの修復・再建であった。現在のペチェルシク大修道院はウクライナ正教会の行政的中心であり、同時に修道士・聖職者を育成する神学校・神学大学も擁している。ペチェルシク大修道院は、いわばウクライナ正教会のかけがえのない過去であり、現在を動かす中心であり、未来への希望である。
ウクライナ正教会に対する政治的追及は、この大修道院をウクライナ正教会から取り上げようというところにまで及んだ。まず、11月に大修道院内の聖堂でロシアを称える聖歌が歌われたということで刑事訴訟が起こされ、大修道院内部の強制捜査が行われた[★7]。そして、12月1日、修道院内の首座聖堂である生神女就寝大聖堂及びトラーペズナヤ聖堂の貸与契約が更新されず、2022年末をもって国家に返還されることが決定されたのである。
最初に問題となった2つの聖堂は「上層」、すなわち博物館の敷地内に位置する。普段は博物館として展示されており観光客も訪れるが、日曜や祭日ごとにはウクライナ正教会の聖職者による祈祷が行われていた[★8]。宗教学者ニコライ・ミトローヒンによれば、大修道院のトラーペズナヤ聖堂には日曜ごとに1500人、生神女就寝大聖堂では600人もの信者が集まっていたという[★9]。大修道院全体では、日曜の祈祷に訪れる信者の数は2500人に達すると言われており、大修道院で参祷していた信者のほとんどが、日常的な祈りの場を奪われることになった。ウクライナ正教会を攻撃する側の狙いは、最終的にはウクライナ正教会を完全に追放することにあるが、社会的な反応を見るための試金石として、まずは2つの聖堂を取り上げることにしたと言われている。ウクライナ正教会の心臓部とも言える諸機関が置かれているのは「下層」だ。
ウクライナ正教会を大修道院から完全に追放し、新しい主になることを望んでいるのは、ウクライナ正教会とライバル関係にある新正教会である。上層の聖堂についての貸与契約が更新されないことが発表された翌日(2022年12月2日)に、新正教会は「キーウ・ペチェルシク大修道院」を宗教組織として登録したと発表した[★10]。第1回で紹介した通り、ウクライナでは「新正教会」あるいは「ウクライナ正教会」という宗教団体が法人として登録されているわけではなく、それぞれ固有の聖堂に集う教区教会や、修道院、兄弟会などが「宗教組織」として登録されている。そして、それぞれの宗教組織が、登録の際にどの宗教団体の管轄下にあるかを明記することになる(本論でも以下に取り上げる「移管」はこの所属を書き換えることを指す)。新正教会は同名の修道院を宗教組織として登録することによって、ウクライナ正教会が追放された際には、速やかに大修道院を自分たちの管轄下に置こうという目算であった。
ウクライナ正教会を大修道院から完全に追放し、新しい主になることを望んでいるのは、ウクライナ正教会とライバル関係にある新正教会である。上層の聖堂についての貸与契約が更新されないことが発表された翌日(2022年12月2日)に、新正教会は「キーウ・ペチェルシク大修道院」を宗教組織として登録したと発表した[★10]。第1回で紹介した通り、ウクライナでは「新正教会」あるいは「ウクライナ正教会」という宗教団体が法人として登録されているわけではなく、それぞれ固有の聖堂に集う教区教会や、修道院、兄弟会などが「宗教組織」として登録されている。そして、それぞれの宗教組織が、登録の際にどの宗教団体の管轄下にあるかを明記することになる(本論でも以下に取り上げる「移管」はこの所属を書き換えることを指す)。新正教会は同名の修道院を宗教組織として登録することによって、ウクライナ正教会が追放された際には、速やかに大修道院を自分たちの管轄下に置こうという目算であった。
しかし、大修道院の法的な所有者である文化庁は、ウクライナ正教会に許したのと同様の形で新正教会にこの施設を貸与するつもりはないようだ。新正教会の「大修道院」登録と同日のうちに、文化大臣オレクサンドル・トカチェンコは大修道院が「上層」も「下層」も共に国有財産であることを強調し、この後2か月間は、正教会が大修道院の敷地をどのように利用してきたかの調査に当て、その後、聖堂の処遇についての決定を行うと発表したのである[★11]。つまり、貸与契約終了後の2023年1月1日以降、新正教会が「上層」の2つの聖堂を、ウクライナ正教会がそうしていたように、日常的に利用するということは認められていない。
しかし、2つの聖堂が国に返還された後、ここで祈祷を行うことが許可されたのは新正教会のみである。1月7日の降誕祭(ウクライナの正教会が用いるグレゴリオ暦でのクリスマス)の日、首座主教エピファニー(ドゥメンコ)が新正教会として初めての祈祷を大修道院内で行った。しかし、これまでこの聖堂で祈っていたウクライナ正教会の信者たちは、新正教会が執り行う降誕祭にほとんど参加しなかった。彼らに代わって教会を埋め尽くした群衆には、ジャーナリストと軍服を着た兵士たちの姿が目立った。
さらに1月23日には、トラーペズナヤ聖堂でウクライナ音楽のコンサートが行われた。信者たちが消えた聖堂に賑わいを取り戻すために行われたという話もあるが、真相はわからない。招かれたアーティスト・グループはコサックの伝統的衣装に身を包み、バンドゥーラ(コブザとも呼ばれるウクライナの民俗楽器)に合わせて、さまざまな時代のウクライナ民謡を歌った。これまで大修道院で祈りを捧げてきた信者たちにとっては、ウクライナの古い民謡であれ、聖なる場所で世俗の音楽が演奏されたこと自体が極めて大きな衝撃であった[★12]。そもそも、正教会の聖歌では楽器を用いること自体がないのだ。さらに彼らが演奏した曲の中に「モスクワ野郎を殺し、モスクワをせん滅せよ、イイススが祝福したもう」という内容のものがあったことがSNSで公表された。聖堂の中で、そのような内容の歌が歌われたことは、聖堂を明け渡さざるを得なかった信者・聖職者にとって二重の苦痛となった。
上層の2つの聖堂がウクライナ正教会から国家に返還されたのち、聖堂はすっかりがらんどうになってしまった。それは結局、これらの聖堂が新正教会に譲渡されなかったからだ、という反論があるかもしれない。しかし、新正教会に譲渡された聖堂の多くが似たような状況にあることは、少なくない研究者、観察者が指摘しているところである。私自身の限られた現地調査の経験からも、これは否定しがたい。よく知られたロシア語のことわざに「聖地はいつも満員御礼」というのがある。大修道院はもはや聖地ではなくなってしまうのだろうか。聖地が聖地でなくなる時代、聖地ががらんどうになる時代、それは一九一七年革命後20年間続いたもっとも過激な宗教弾圧の時代ではなかったか。
しかし、2つの聖堂が国に返還された後、ここで祈祷を行うことが許可されたのは新正教会のみである。1月7日の降誕祭(ウクライナの正教会が用いるグレゴリオ暦でのクリスマス)の日、首座主教エピファニー(ドゥメンコ)が新正教会として初めての祈祷を大修道院内で行った。しかし、これまでこの聖堂で祈っていたウクライナ正教会の信者たちは、新正教会が執り行う降誕祭にほとんど参加しなかった。彼らに代わって教会を埋め尽くした群衆には、ジャーナリストと軍服を着た兵士たちの姿が目立った。
さらに1月23日には、トラーペズナヤ聖堂でウクライナ音楽のコンサートが行われた。信者たちが消えた聖堂に賑わいを取り戻すために行われたという話もあるが、真相はわからない。招かれたアーティスト・グループはコサックの伝統的衣装に身を包み、バンドゥーラ(コブザとも呼ばれるウクライナの民俗楽器)に合わせて、さまざまな時代のウクライナ民謡を歌った。これまで大修道院で祈りを捧げてきた信者たちにとっては、ウクライナの古い民謡であれ、聖なる場所で世俗の音楽が演奏されたこと自体が極めて大きな衝撃であった[★12]。そもそも、正教会の聖歌では楽器を用いること自体がないのだ。さらに彼らが演奏した曲の中に「モスクワ野郎を殺し、モスクワをせん滅せよ、イイススが祝福したもう」という内容のものがあったことがSNSで公表された。聖堂の中で、そのような内容の歌が歌われたことは、聖堂を明け渡さざるを得なかった信者・聖職者にとって二重の苦痛となった。
上層の2つの聖堂がウクライナ正教会から国家に返還されたのち、聖堂はすっかりがらんどうになってしまった。それは結局、これらの聖堂が新正教会に譲渡されなかったからだ、という反論があるかもしれない。しかし、新正教会に譲渡された聖堂の多くが似たような状況にあることは、少なくない研究者、観察者が指摘しているところである。私自身の限られた現地調査の経験からも、これは否定しがたい。よく知られたロシア語のことわざに「聖地はいつも満員御礼」というのがある。大修道院はもはや聖地ではなくなってしまうのだろうか。聖地が聖地でなくなる時代、聖地ががらんどうになる時代、それは一九一七年革命後20年間続いたもっとも過激な宗教弾圧の時代ではなかったか。
戦争は神をもを殺すか
2022年秋のウクライナ国家保安庁による捜査では、350以上の教会と850人のウクライナ正教会関係者がウクライナ国家保安庁の捜査対象となった[★13]。ウクライナ正教会の活動を法的に禁止にすべきだという論調が高まり、11月29日にはリヴィウ州議会が、ウクライナ正教会の活動を禁止する法案についての整備を進めるよう、ウクライナ最高議会に求めることを決議した[★14]。
ウクライナ正教会に対する政治的圧力について、国家権力の側に危惧する向きがまったくなかったわけではない。国家機関である「民族政策と良心の自由庁」(以下、「民族・宗教問題庁」と略)の責任者オレーナ・ボフダンは、特定の宗教団体に対する違法な抑圧に反対していた。ボフダンは社会学者として大学で教鞭を取る研究者でもある。さまざまなデータから、日曜の礼拝の時間、ウクライナ正教会の聖堂が信者であふれんばかりであるのに、新正教会の聖堂ががらんどうであることを彼女は知っていた。また、移管に関する多くの事例で、法律に違反する行為があったことを知っていた。だから、ウクライナ正教会に対する現行の措置は、ウクライナ社会に統合ではなく、分断と混乱をもたらすと彼女は繰り返し主張した。
さらにボフダンは、現行の法律では、ウクライナ正教会、新正教会などが宗教団体として国家登録を受け、法人格を有しているわけではない以上、ウクライナ正教会全体を法的に禁止することはできないと明言し続けた。ウクライナ正教会が「ルースキー・ミールの温床」であるというのなら、この教会が敵国に通じる政治団体あるいはテロリスト集団として機能していることが証明されなくてはならない。法律違反の疑いがある聖職者に対しては個別に司法の場に持ち込むことが必要なのであって、それ以上のことは民主主義を名乗り、EU加盟を目指す国家にはできないことなのだと主張した[★15]。5月27日の公会で、ウクライナ正教会がロシア正教会からの「独立」を宣言し、ウクライナ主権に対する支持を明確に表明している以上、この宗教団体を「テロリスト集団」と認定することは難しいとボフダンは考えていた。
ボフダンはこのような態度のために、「ロシア正教会の擁護者」というレッテルが張られ、野次や罵詈雑言のほかに、社会学者を名乗る素質がないとの非難までなされた。だが、彼女は自説を曲げなかった。
12月1日、国家安全保障・防衛会議は、「ウクライナ社会の統合を促進し、国益を守るため」、ウクライナ正教会への制裁措置を決定し、即日ゼレンスキー大統領による大統領令820号が発せられた[★16]。これにより、先に紹介したペチェルシク大修道院の聖堂貸与の問題に加えて、2か月以内に「ロシア連邦に置かれた中央から影響を受けている宗教団体」の活動を禁止する法案の準備を進めること、またウクライナ正教会関係者10名に資産凍結などの法的・経済的制裁を加えることが決定した。リストの筆頭には、有力なオリガルヒでウクライナ正教会最大のメセナの一人であるヴァジム・ノヴィンスキの名が上がり、続いてペチェルシク大修道院院長パーヴェル(レベジ)と続いた。この大統領令によって、ウクライナ正教会の活動を法的に禁止するための準備が開始されたと言ってよい。この大統領令と前後して、ウクライナ最高会議には、ウクライナ正教会の活動を禁止するための法案が立て続けに3つも出されている[★17]。
実は、それ以前にも自治体単位で正教会の活動を禁止する事例があった[★18]。しかしウクライナ憲法は政教分離と良心の自由を定めている。戦争のために発動中の戒厳令下においては憲法改正ができない以上、政治的理由によって宗教団体の活動を禁止することは違憲となる。つまり、ウクライナが法治国家である限り、ウクライナ正教会を全面禁止することはできない。登録された一つ一つの教区教会などの宗教組織について「ロシア連邦に置かれた中央から影響を受けている宗教団体」であるかを審査した上で、個々の宗教組織に対する相応の措置を取るしか方法がないのである。
これらの問題を判断するよう求められたのが、ボフダン率いる民族・宗教問題庁であった。ところが、12月6日、彼女は職を解かれてしまったのである。更迭されたボフダンに代わって、民族・宗教問題庁のトップに就任したのは、ヴィクトル・イェレンスキーである。イェレンスキーもまた、宗教研究者として著名なアカデミックの人間であるが、同時にウクライナ正教会に対する容赦ない攻撃と、新正教会擁護の立場で知られていた[★19]。ウクライナ正教会に対する活動全面禁止令を出すことが違憲であることをよく理解していたイェレンスキーは[★20]、専門家としてこの難題に対する解決策を提示した。
実は、それ以前にも自治体単位で正教会の活動を禁止する事例があった[★18]。しかしウクライナ憲法は政教分離と良心の自由を定めている。戦争のために発動中の戒厳令下においては憲法改正ができない以上、政治的理由によって宗教団体の活動を禁止することは違憲となる。つまり、ウクライナが法治国家である限り、ウクライナ正教会を全面禁止することはできない。登録された一つ一つの教区教会などの宗教組織について「ロシア連邦に置かれた中央から影響を受けている宗教団体」であるかを審査した上で、個々の宗教組織に対する相応の措置を取るしか方法がないのである。
これらの問題を判断するよう求められたのが、ボフダン率いる民族・宗教問題庁であった。ところが、12月6日、彼女は職を解かれてしまったのである。更迭されたボフダンに代わって、民族・宗教問題庁のトップに就任したのは、ヴィクトル・イェレンスキーである。イェレンスキーもまた、宗教研究者として著名なアカデミックの人間であるが、同時にウクライナ正教会に対する容赦ない攻撃と、新正教会擁護の立場で知られていた[★19]。ウクライナ正教会に対する活動全面禁止令を出すことが違憲であることをよく理解していたイェレンスキーは[★20]、専門家としてこの難題に対する解決策を提示した。
その解決策とは次のようなものである。第一に憲法による政教分離の原則であるが、これはウクライナ正教会の主教区という中枢機関を「ロシア連邦に置かれた中央から影響を受けている宗教組織」と認定すれば、国家安全保障の観点からその活動を禁止することが可能になるという。中枢を破壊してしまえば、個別の教区教会が「正教会」を名乗ることは自由だというのである。第二に、ウクライナ正教会とロシアとの結びつきに関しては、専門家たちが、教会法に関わるもののみならず、経済的・政治的な結びつきを含めて調査することになった。しかし、特定の目的を持った調査が、その目的に沿って都合よく解釈されうることは言を俟たない。
民族・宗教問題庁の専門家会議は2023年1月31日、ウクライナ正教会はロシア正教会と関係を断絶した独立教会であるとは言えず、いまだにロシア正教会の一部である、という結論を発表した[★21]。この結論を証拠づける長大な文書に関しては、さまざまに議論することが可能であるだろう。だが、本論が着目したいのはそこではない。この専門家会議に、宗教研究者、歴史学者が加わり、初めから決められていた結論に、あたかも学術的・価値中立的立場から下された判断であるかのような権威づけがされた点が問題であるのだ。
第2回ですでにみたように、ウクライナ正教会が「使徒継承性」にこだわる以上、教会独立は拙速な宣言を許されない繊細な問題であった。「使途継承性」、すなわち古代キリスト教会から連綿と受け継がれてきた正当な教会であることを証しするのは、独立しようとする教会がもともと属していた教会、すなわちこの場合ロシア正教会である。正教会が独立を達成するためには、時に百年単位の時間がかかることを歴史は示している。現状では、ロシア正教会がウクライナ正教会の独立を認めることは難しいだろう。さらに、ウクライナ正教会の中には、占領地に置かれた主教区があり、それらの地域の信者・聖職者がいわば「人質」となっていることを考える必要もあることはすでに述べた通りだ。それにもかかわらず、国家が戦略的に貼り付けた「裏切者」のレッテルに対し、研究者たちは価値中立的な立場からの客観的な学術的判断であるかのような権威を与えたのであった。
民族・宗教問題庁の専門家会議は2023年1月31日、ウクライナ正教会はロシア正教会と関係を断絶した独立教会であるとは言えず、いまだにロシア正教会の一部である、という結論を発表した[★21]。この結論を証拠づける長大な文書に関しては、さまざまに議論することが可能であるだろう。だが、本論が着目したいのはそこではない。この専門家会議に、宗教研究者、歴史学者が加わり、初めから決められていた結論に、あたかも学術的・価値中立的立場から下された判断であるかのような権威づけがされた点が問題であるのだ。
第2回ですでにみたように、ウクライナ正教会が「使徒継承性」にこだわる以上、教会独立は拙速な宣言を許されない繊細な問題であった。「使途継承性」、すなわち古代キリスト教会から連綿と受け継がれてきた正当な教会であることを証しするのは、独立しようとする教会がもともと属していた教会、すなわちこの場合ロシア正教会である。正教会が独立を達成するためには、時に百年単位の時間がかかることを歴史は示している。現状では、ロシア正教会がウクライナ正教会の独立を認めることは難しいだろう。さらに、ウクライナ正教会の中には、占領地に置かれた主教区があり、それらの地域の信者・聖職者がいわば「人質」となっていることを考える必要もあることはすでに述べた通りだ。それにもかかわらず、国家が戦略的に貼り付けた「裏切者」のレッテルに対し、研究者たちは価値中立的な立場からの客観的な学術的判断であるかのような権威を与えたのであった。
また、新正教会の側からも、ウクライナ正教会の活動制限を法的に定めるよう要請する声明が出された[★22]。そもそも、新正教会には信者ばかりか聖職者も修道士も数が少なく、教区生活が低調な教区教会も散見される。新正教会を支持する人々は、祖国を熱愛する愛国者であっても、教会に通い慣れた信者ではないことがよくあるのだ。彼らの多くは聖堂に新正教会の看板がかかっていればそれで満足なのであり、看板をかけ替えた後のことには関心を持たない。
現在、新正教会はペチェルシク大修道院を手に入れたいと望んでいるが[★23]、新正教会全体でも修道士の数は50名ほどであると言われている。それに対し、ペチェルシク大修道院だけでウクライナ正教会の修道士は200名を数える。ウクライナ正教会と新正教会が合同すれば問題は解決する、という意見もある。しかし、それは新正教会が望む方法ではない。というのも、ウクライナ正教会が圧倒的多数派である以上、2つの教会の合同は、ウクライナ正教会が新正教会を吸収するものになりかねない。合同にあたって、新しい教会指導部を民主的に選ぶとしたら、数の上で勝るウクライナ正教会が有利だからである。
だからこそ、新正教会はウクライナ正教会を少しずつ切り崩し、離反した信者・聖職者らを自らの陣営に取り込むことによって、名実ともにウクライナ唯一の正教会となることを夢見ている。そしてその夢は大統領府にも、研究者にも、多くの市民にも共有されているのである[★24]。戦時にこそ、夢や希望がなくてはならない。しかし、それが憎悪や「敵」の排除を伴ってしか実現できないものであるのなら、その先にはどんな未来があるのだろうか。
ウクライナ正教会に対する政治的圧力は、良心の自由という人権に関わる問題にとどまらない。そこにはメディア統制という言論の自由の問題がある。また、国家が政教分離の原則を蔑ろにしているという問題もある。国家に対して翼賛的な宗教団体や御用学者しか社会的影響力を持つことができないという構造が、こうした状況を作り上げている。そしてそれによって世論が操作され、世論の支持があるという理由でこの一種全体主義的な構造が強化されていくのである。
これもまた、戦争が生み出したものであることは間違いない。戦争は前線で戦う兵士や残された家族、攻撃の被害を受けた人々のみならず、銃後の人々の感覚を狂わせるのである。この、当然と言えば当然すぎる戦争の帰結が、攻撃を仕掛けたロシアのみならず、侵略を受けたウクライナ社会の内部にも大きな影を落としていることから、私たちは目を逸らしてはならないのだ。
この原稿を執筆中の3月10日、文化省はウクライナ正教会に対し、3月29日までに「下層」からの完全な退去を命ずる通告を出した。大修道院内には600名を超える修道士や神学生らが生活しており、教会行政の中心や神学校がある。移動先の準備もないまま短期間でこれらすべてが退去することは、どう考えても不可能だ。これはウクライナ正教会の中枢を強制的に解体するという通告に等しい。通告が出てから、大修道院には連日信者がぎっしりと詰めかけている。そして修道士や高位聖職者たちは、出ていくつもりはないというメッセージをさまざまな形で発信している。今、大修道院をめぐる緊張はかつてないほど高まっている。(第4回へつづく)
現在、新正教会はペチェルシク大修道院を手に入れたいと望んでいるが[★23]、新正教会全体でも修道士の数は50名ほどであると言われている。それに対し、ペチェルシク大修道院だけでウクライナ正教会の修道士は200名を数える。ウクライナ正教会と新正教会が合同すれば問題は解決する、という意見もある。しかし、それは新正教会が望む方法ではない。というのも、ウクライナ正教会が圧倒的多数派である以上、2つの教会の合同は、ウクライナ正教会が新正教会を吸収するものになりかねない。合同にあたって、新しい教会指導部を民主的に選ぶとしたら、数の上で勝るウクライナ正教会が有利だからである。
だからこそ、新正教会はウクライナ正教会を少しずつ切り崩し、離反した信者・聖職者らを自らの陣営に取り込むことによって、名実ともにウクライナ唯一の正教会となることを夢見ている。そしてその夢は大統領府にも、研究者にも、多くの市民にも共有されているのである[★24]。戦時にこそ、夢や希望がなくてはならない。しかし、それが憎悪や「敵」の排除を伴ってしか実現できないものであるのなら、その先にはどんな未来があるのだろうか。
ウクライナ正教会に対する政治的圧力は、良心の自由という人権に関わる問題にとどまらない。そこにはメディア統制という言論の自由の問題がある。また、国家が政教分離の原則を蔑ろにしているという問題もある。国家に対して翼賛的な宗教団体や御用学者しか社会的影響力を持つことができないという構造が、こうした状況を作り上げている。そしてそれによって世論が操作され、世論の支持があるという理由でこの一種全体主義的な構造が強化されていくのである。
これもまた、戦争が生み出したものであることは間違いない。戦争は前線で戦う兵士や残された家族、攻撃の被害を受けた人々のみならず、銃後の人々の感覚を狂わせるのである。この、当然と言えば当然すぎる戦争の帰結が、攻撃を仕掛けたロシアのみならず、侵略を受けたウクライナ社会の内部にも大きな影を落としていることから、私たちは目を逸らしてはならないのだ。
この原稿を執筆中の3月10日、文化省はウクライナ正教会に対し、3月29日までに「下層」からの完全な退去を命ずる通告を出した。大修道院内には600名を超える修道士や神学生らが生活しており、教会行政の中心や神学校がある。移動先の準備もないまま短期間でこれらすべてが退去することは、どう考えても不可能だ。これはウクライナ正教会の中枢を強制的に解体するという通告に等しい。通告が出てから、大修道院には連日信者がぎっしりと詰めかけている。そして修道士や高位聖職者たちは、出ていくつもりはないというメッセージをさまざまな形で発信している。今、大修道院をめぐる緊張はかつてないほど高まっている。(第4回へつづく)
★1 ウクライナ保安庁が押収した資料として、ニコライ二世一家の聖者伝のパンフレットの写真が掲載されているが、これはどこでも販売されており、容易に入手可能である。СБУ проти УПЦ МП. Ще у двох митрополитів знайшли антиукраїнські матеріали // BBC News Україна, 31 жовтня 2022.
★2 2023年1月現在、この動画はYouTubeの規約に抵触するとして削除されている。
★3 Звернення до ТК «1+1» духовенства та мирян Київської єпархії Української Православної// Церкви Українська Православна Церква, 14. 12. 2022. URL= https://news.church.ua/2022/12/14/zvernennya-tk-11-duxovenstva-ta-miryan-kijivskoji-jeparxiji-ukrajinskoji-pravoslavnoji-cerkvi/
★4 Обращение священников УПЦ к Патриарху Кириллу и Блаженнейшему Онуфрию// Київський Єрусалим, 1. 3. 2022.URL= https://www.youtube.com/watch?v=fpXaCNmJSiM&t=3439s
★5 この問題を取り上げた例外的なウクライナ・メディアにロシア語を放送言語とする、「Strana.ua」がある。キャスターのオレーシャ・メドヴェージェヴァはこうした言動について「暴力からは暴力しか生じず、(たとえ今の戦争が終わっても、人びとの心の中での)戦争は続く」、「人間は人間に対して狼ではない。友人でありきょうだいなのだ」とコメントしている。敵性メディアと考えられており、ウクライナ国内での地上波放送は禁じられている。URL=https://www.youtube.com/watch?v=HNNVmKf6_f0
★6 下層に関しては、2013年にウクライナ正教会に貸し出す契約が締結されている。しかしその契約に期限が明記されていないことが問題とされ、見直しが要求されている。Мін’юст перевірить договір УПЦ МП на оренду майна Нижньої Лаврі// Укрінформ, 11. 01. 2023. URL= https://www.ukrinform.ua/rubric-society/3650713-minust-perevirit-dogovir-upc-mp-na-orendu-majna-niznoi-lavri.html
★7 この時に問題とされた聖歌は「生神女(聖母マリアのこと──引用註)よ/生ける奇跡のいずみ/聖ルーシはあまねくそなたに祈ります/…/鐘の音が流れていく/ロシアの上に漂っていく/母なるルーシは目覚めつつある」という内容のものである。これが宗教的憎悪の扇動や利敵行為に当たるのかという問題は重視されない。ニュースでは、「ロシア賛美が行われた」という前提のもので報じられてしまうからである。У Києво-Печерській Лаврі співали про Росію і прославляли "матушку Русь"// ТСН. 14. 11. 2022. URL= https://www.youtube.com/watch?v=cxyDODoySg4
★8 博物館と教会という2つの機構がひとつの敷地や建物の中に共存していることは、ウクライナではしばしば見受けられる事態である。ペチェルシク修道院の場合、観光客用と信者用の入り口が別に設けられており、観光客は見学料を支払うことが求められるが、信者は無料で修道院の敷地内に入ることが可能である。
★9 Митрохин Н. «Придет веселая толпа епископов. Переизберет себе все руководство»// Важная история. 29. 12. 2022. URL= https://istories.media/opinions/2022/12/29/pridet-veselaya-tolpa-yepiskopov-pereizberet-sebe-vse-rukovodstvo/
★10 Зареєстровано Свято-Успенську Києво-Печерську Лавру як монастир у складі ПЦУ// Православна Церква України. 2 грудня 2022. URL= https://www.pomisna.info/uk/vsi-novyny/zareyestrovano-svyato-uspensku-kyyevo-pechersku-lavru-yak-monastyr-u-skladi-ptsu/
★11 Ткаченко про реєстрацію монастиря ПЦУ в Лаврі: Про передачу мова не йде// Українська правда. 2 грудня 2022. URL= https://www.pravda.com.ua/news/2022/12/2/7379054/
★12 У трапезному храмі Лаври заспівали про вбивство «москаля»// Союз православних журналістів. 22. 01. 2023. URL= https://spzh.news/ua/news/71490-u-trapeznomu-khrami-lavri-zaspivali-pro-vbivstvo-moskalja
★13 СБУ заявила, что нашла в Киево-Печерской лавре материалы о «русском мире», синод УПЦ уволил «пророссийских епископов»// BBC News Русская служба. 23 ноября 2022. URL= https://www.bbc.com/russian/news-63737093
★14 ここでも、メディアによる印象捜査が行われている可能性がある。リヴィウ州議会ではウクライナ正教会の活動の禁止をウクライナ最高議会に対して要求する決議が採択されたとあるが、ラジオ・リバティの報道では、「リヴィウ州議会がウクライナ正教会の活動禁止を決議」と報じられている。(Львівська обласна рада вимагає заборонити діяльність релігійних організацій УПЦ (московського патріархату)// Львівська обласна рада. 29 листопад 2022. URL= https://lvivoblrada.gov.ua/articles/lvivska-oblasna-rada-vimagaje-zaboroniti-diyalnist-religiinih-organizacii-upc-moskovskogo-patriarhatu?fbclid=IwAR3C0Yqd7BOCixMNrd43hcRo1z4xUq9mWyCOBWx-tmt3sjAp1cA1uhSwZWY)。しかし、ラジオ・リバティの報道では、「リヴィウ州議会がウクライナ正教会の活動禁止を決議」と報じられている(Львівська облрада проголосувала за заборону діяльності УПЦ (МП)// Радіо Свобода. 29 листопад 2022. URL= https://www.radiosvoboda.org/a/news-lvivska-oblrada-upc-mp/32154415.html)11. 0222. (URL= https://lvivoblrada.gov.ua/articles/lvivska-oblasna-rada-vimagaje-zaboroniti-diyalnist-religiinih-organizacii-upc-moskovskogo-patriarhatu?fbclid=IwAR3C0Yqd7BOCixMNrd43hcRo1z4xUq9mWyCOBWx-tmt3sjAp1cA1uhSwZWY), Львівська облрада проголосувала за заборону діяльності УПЦ (МП)// Радіо Свобода, 29 11. 2022. URL= https://www.radiosvoboda.org/a/news-lvivska-oblrada-upc-mp/32154415.html
★15 Московський ПАТРІАРХАТ та розслідування СБУ: чим усе закінчиться? ІНТЕРВ'Ю | Олена Богдан// Факти ICTV. 28. 11. 2022. URL= https://www.youtube.com/watch?v=XL9nHwQ0QZ0&t=1679s
★16 市民権停止に関する法令は、個人情報を含むため公開されていない(URL=https://www.president.gov.ua/documents/8202022-45097)。LB.uaの独自の調査によって、トゥルシン府主教イオナファンなど、そのリストが明らかにされた(URL=https://lb.ua/society/2023/01/07/541775_prezident_prizupiniv_gromadyanstvo.html)
★17 Проект Закону про забезпечення зміцнення національної безпеку у сфері свободи совісті та діяльності релігійних організацій, № 8221 від 23. 11. 2022 (URL=https://itd.rada.gov.ua/billInfo/Bills/Card/40832), Проект Закону про внесення змін до деяких законодавчих актів України щодо удосконалення правового регулювання діяльності релігійних організацій, № 8262 від 05. 12. 2022 (URL=https://itd.rada.gov.ua/billInfo/Bills/Card/40938), Проект Закону про внесення змін о деяких законів України щодо діяльності в України релігійних організацій, № 8371 від 19. 01. 2023 (URL=https://itd.rada.gov.ua/billInfo/Bills/Card/41219).
★18 У Кагарлику на Київщині заборонили УПЦ МП до кінця війни// LB.ua. 13 травня 2022. URL= https://lb.ua/society/2022/05/13/516627_u_kagarliku_kiivshchini_zaboronili.html
★19 イェレンスキーは西側の研究者とも近い関係にある。例えば、長年ウクライナの宗教を研究してきた人類学者キャサリン・ワンナー(ペンシルバニア大学教授)の研究協力者であり、共著論文も発表している(URL=https://www.wglivedreligion.org/research-network-1)。ニコライ・ミトローヒンの紹介で筆者もイェ レンスキーに2015年にインタビューを取っており、その政治姿勢については確認済みである。
★20 Віктор Єленський: «Структури Московського патріархату не повинні бути в Україні. Таким є суспільний запит// LB.ua. 23 грудня 2022. URL= https://lb.ua/news/2022/12/23/540088_viktor_ielenskiy_strukturi.html
★21 Висновок релігієзнавчої експертизи Статуту про управління Української Православної Церкви на наявність церковно-канонічного зв’язку з Московським патріархатом// Державна служба України з єтнополітики та свободі совісті. 22 січня 2023. URL= https://dess.gov.ua/vysnovok-relihiieznavchoi-ekspertyzy-statutu-pro-upravlinnia-ukrainskoi-pravoslavnoi-tserkvy/
★22 Заява Священного Синоду щодо необхідності законодавчого обмеження втручання країни-агресора в релігійне життя України// Православна Церква України. URL= https://www.pomisna.info/uk/vsi-novyny/zayava-svyashhennogo-synodu/
★23 Интервью с Епифанием. Предстоятель ПЦУ — о судьбе Лавры, отношении к его церкви в православном мире и «дьявольских вещах»// New Voice. 29 января 2023. URL= https://nv.ua/ukraine/politics/epifaniy-kto-podderzhivaet-pcu-v-mire-kogda-lavru-pokinet-mp-i-chto-budet-s-rpc-novosti-ukrainy-50299627.html
★24 2022年12月にキエフ国際社会学研究所が行った世論調査によれば、ウクライナ人の78%がウクライナ正教会に国家がある程度介入すべきであると考えており、54%がウクライナ正教会の活動を完全に禁止すべきであると考えていることが明らかになったと報じられている。78% Українців вважають, що держава має втрутитися у діяльність УПЦ (МП), з них більшість за заборону—КМІС// Радіо Свобода, 29. 12. 2022. URL= https://www.radiosvoboda.org/a/news-kmis-opytuvannya-upts-mp/32199062.html
高橋沙奈美
九州大学人間環境学研究院。主な専門は、第二次世界大戦後のロシア・ウクライナの正教。宗教的景観の保護、宗教文化財と博物館、聖人崇敬、正教会の国際関係、最近ではウクライナの教会独立問題など、正教会に関わる文化的事象に広く関心を持つ。著書に『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観 社会主義体制下の宗教文化財、ツーリズム、ナショナリズム』(北海道出版会)、共著に『ロシア正教古儀式派の歴史と文化』(明石書店)、『ユーラシア地域大国の文化表象』(ミネルヴァ書房)など。