世界と家族を知る「大きな物語」──『大いなる遺産』|加賀山卓朗

2025年5月10日刊行『ゲンロン18』

チャールズ・ディケンズ Charles Dickens(1812-70)
引用元=https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Greatexpectations_vol1.jpg#mw-jump-to-license


加賀山卓朗
62年生。翻訳家。訳書に、チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』、『二都物語』、『オリヴァー・ツイスト』(新潮文庫)、ル・カレ『スパイたちの遺産』(早川書房)など多数。依田卓巳名義でノンフィクションも翻訳している。
1 コメント
- nankai4go2025/08/19 17:59
加賀山さんがこの記事で、血縁以外の登場人物も「広い意味で家族なのかもしれない」と書かれていることに、この作品の全てがあるかもしれません。 登場人物のピップは血縁者は姉がいるのみですが、姉の夫のジョーとは義兄以上の良い関係を築いています。他に家族的な関係として、加賀山さんが記事にあげている登場人物以外にも、遺産をくれたマグウィッチ、ミス・ハヴィジャム、親友のハーバード、家事手伝いのビディなども、家族的と言えるのではないでしょうか?家族=血縁と言う狭い考え方を訂正させてくれる作品です。 そういった家族的な人物達との交流を重ね、偶然相続することになった大いなる遺産に翻弄されつつも、遺産を得なければ鍛冶屋では経験できなかった出来事、出会えなかった人間関係によって、主人公ピップが人間として成長していく様子を読むことができることが、この小説の読み応えだと思います。




