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    【 #ゲンロン友の声】ゲンロンβ36読者アンケートより

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     こんにちは。ついにツイッターのアイコンを変えた東浩紀です。ついに娘離れの時……。こちらのアイコンは古いまま(Facebookヴァージョン)のようですが、変更は面倒なようなのでしばらく大目にみてください。

     さて、恒例のアンケート紹介企画です。今回は『ゲンロンβ36』です。恒例のとかいっても、本当は先月から始めたばかりなんですけどね。アンケート紹介企画とはなにか、そもそも『ゲンロンβ』とはなにかと思うひとは、とりあえず先月の記事をお読みください。リンクはこちら(https://genron-voices.tumblr.com/post/184249152609/)です。『ゲンロンβ36』の目次はここから読めます。

     そしてこの記事が投稿された日(5月30日)の午後には、ちょうど『ゲンロンβ37』が配信・刊行されているはずです。『ゲンロンβ』の購読には、ぼくたちとしては友の会に入会してくれるのがいちばんありがたいですが、どうしても友の会には入りたくない、東の味方だと思われたくないんだ!というむずかしい事情をお抱えのかたは、AmazonのKindleなどでも個別に購入できます。この記事がおもしろかったら、ぜひ36だけでなく37のほうも買ってくださいね〜。

    ◾️

     ではさっそく行きましょう。

     まずは今号からの新連載、本田晃子さんの「亡霊建築論」について。これはかなりの反響があって、いくつもアツい感想が届きました。2つ紹介します。

     

     建築というのは、建てられ、そこにあり続けることに意味があるものだと思い込んでいたが、アンビルドという亡霊の話は大変興味深かった。アンビルドであればこそ場所や時間に縛られず、ありえた現実を想起させる装置となる。ソ連という大国が崩壊して30年足らず、生々しい亡霊の可能性を感じさせる論考であった。この先の展開も非常に期待している。 

     「「建てられた」建築の背後には、無数の「建てられなかった」建築が存在する。」もうこの書き出し一発で(あ、この人文章上手い。)と確信しました。そして僕のその確信は見事的中し、最後までとても面白く、いろんな人に話したくなるように上手く纏められた文章だと思いました。キャッチーなキーワードが並べられてるからでしょうか。「アンビルド建築」「労働宮殿」「ヴェスニン兄弟」「構成主義」・・・。おぉっと、全然内容に触れていませんねw 

     上記のキーワードから語られるロシアの理想主義的な突っ走りが面白かったです。よく訪日外国人が日本の文化に触れて「どうしてこうなったw」と感じるように、発想の出どころが全く推測できないものへの興味関心を掻き立てられました。

     この連載、ぼくもとても期待しています! 本田さんはイベントでもおもしろいんですよねえ。個人的にめっちゃ期待していて、ゲンロンカフェにもどんどん来てほしいと思っています。

     つぎに今回は飴屋さんの弓指寛治展評も大人気でした。

     序文で上田さんが書いていたテキストのかたちでの美術展示の追体験は成功しました。順序立てて解説とコメント、作品の図が入るので一つのドキュメンタリー作品を観ているかのようでした。しかし劇的なクライマックスとエピローグめいた展示もあり、大変貴重な読書体験をさせてもらいました。ありがとうございます。「芸術ってこう観るのか〜」と素朴に感心できるライトな層にも、深く刺さる表現がありました。(何を偉そうに、僕こそがそのライトな層なのですが・・。)凄い絵一枚見せられてただけでは「凄い。」の一言で終わるのですが、本当に凄い絵と解説が入ることによって「ダイナマイト心中」という絵の細かいところにまで目線を注がせる力が働くのかなと思いました。

     成果展に関しても、同様にそこに置かれている物や仕掛けを「読む」事が基本なんだなと思いました。そして「読む」にはまず文法を理解する必要があって、その文法はやはりテキストというかたちがとても適してると。

     この原稿はかなり不思議な作られ方をしていて、まずは飴屋さんから弊社上田に送られた個人的なメッセージから始まっているんですよね。それを上田が掲載用に再構成し、それに飴屋さんが手をいれて、そしたらさらに弓指くんも文章を寄せることになって……というわけで、結果的に3人の往復書簡みたいなテキストになっている。それがまた弓指くんの会場構成とうまく呼応しあっていて、内容がおもしろいだけでなく、形式的にもじつに稀有な展評になっているので、未読のかたはぜひお読みいただければ、と思います!

     つぎに、今回もアンケート人気ナンバーワン(そう、じつはひそかに毎回順位が出ているのです……)の大山顕さん。

     私は大山さんのファンなのですが、それは大山さんの文章を読んで、何回も何回もなるほどなるほどと思って、思うだけでなくて、必ず考えることができて、その考えることがいつまでも残り続けるからです。「別の名称が必要だと思うが、まだいいネーミングが思いつかない。」という<言葉>に対する非常に丁寧な態度への共感でもあります。思いつくこと、と思いついたその思いつき方をともに大切にしている宝物のような作家です。

     「宝物のような作家」!! すごい! これは大山さんも元気が出ますね。じっさい、大山さんって、写真はきれいだし、パワポもすごい(なによりも量的にw)けど、文章がほんとうに読みやすくてうまいですよね。単行本化にむけて、弊社もがんばっていきます。

     続いて、「つながりロシア」担当の高橋沙奈美さんに寄せられた感想。

     今回、この論考に一番やられました。全く知らなかったことばかりでしたが、私が普段意識することのない宗教・民族・国家の界面を淡々と描いた超一級のルポルタージュでした。占拠された教会の司祭の妻の「キリスト教徒は楽観主義者なの。希望は最後まで失わない」という言葉がひどく痛切に感じられました。また次の論考も期待しています。

     この「つながりロシア」、旧ソ連圏という縛りがあるものの(弊社代表の個人的な趣味のせいで……w)、毎回毎回かなりディープな海外事情が書いてあって、ぼくもとても勉強になっています。とくに今回のウクライナ正教とロシア正教の分離の話なんて、ほかのメディアには掲載されていない、けれどもじつに興味ふかい現在進行形の話だと思います。「つながりロシア」もいつか本にまとめることができたらいいですね〜。

     そして最後に、「今後取り上げてほしい内容」として寄せていただいた声。

     東さんの情報自由論や一般意思2.0、ISED等の文章を楽しく読んできた者です。

      「新記号論」は読者のリテラシーを上げてくれる、というか目を開かせてくれるものでした。そして何より「自分は勉強をさぼっていたのだな」と深く思わされました(これ本当に大きい衝撃でした)。東さんはよくハッカー文化の話をされますが、DIY的である為にも、是非今後も読者・視聴者へのそのような啓蒙をお願いします。

     ISEDを覚えていてくれた読者さんがいらっしゃったとは! 嬉しいです。 『ゲンロン』第1期は、ちょっと文系というか批評の伝統継承という目次に振りすぎてしまったところがあって、最近は情報社会系やネットカルチャー系の議論が手薄になっているんですよね。けれども、むろんぼく自身としては、そこも自分のホームというか、アイデンティティのひとつだと考えています。『ゲンロン10』からはそこらへんを少しずつ復活させていくつもりですので、ご期待ください。

    ◾️

     それでは、今回の紹介はここらへんで。むろん、ほかにもたくさん感想をいただいていて、それらもすべて目を通しています。『ゲンロンβ36』には、ほかも星野さん、吉上さん、吉田くん……と注目原稿があって、そちらへの感想もみな紹介してお答えしたいのですが、それをやっているとほかの仕事ができなくなるので、なにとぞご容赦を。アンケートについては、編集部内で読むだけでなく、ときおり担当者から著者さんへも転送しています。著者さんへの励ましの言葉もいただければ! そうそう、前回このアンケート紹介欄で「すべての原稿についてアツく感想を寄せてくれるひとがいたので全文紹介します」と書いたら、なんと今月は3人もの方々がすべての原稿についてアツく感想を寄せてくれました!(笑) それぞれたいへんなボリュームで、とてもここでは紹介できなくなってしまったのですが、ぼく以下編集部一同、ありがたく読ませていただいています。本当にありがとうございました。

     このアンケート、ゲンロンにとってとても大事なものです。これからもどしどし感想をお寄せください! そして『ゲンロンβ』次号もよろしくお願いいたします! ではまた来月〜。

    東浩紀

    1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』など。
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