多様性と孤独を抱える理想郷── ムーミン・シリーズ|池澤春菜

2025年5月10日刊行『ゲンロン18』

トーベ・ヤンソン Tove Jansson(1914-2001)
引用元= https://en.wikipedia.org/wiki/File:Moominsgreatflood.jpg


池澤春菜
声優、歌手、エッセイスト。第20代日本SF作家クラブ会長。出演作に『ケロロ軍曹』、『とっとこハム太郎』、『ドラえもん』など多数。著書に『わたしは孤独な星のように』(早川書房)、『ぜんぶ本の話』(共著、毎日新聞出版)など、訳書に劉慈欣『火守』(KADOKAWA)など。
1 コメント
- TM2025/08/20 16:38
ムーミンの物語は子どもの頃に沢山読んだ。他のファンタジーはなぜだか遠くの物語のようだったけど、ムーミンの物語は違った。 池澤さんの指摘された通り、ムーミン一家は他者を絶えず受け入れていく。多分子どもながら私はその 未知ととけて変化するということが魅力的に映ったし、希望として灯ったのだと思う。 一方で今回の論考を読んで気付かされたのはムーミンたちの孤独だった。子どもの頃、感覚でその肌触りは受け取っていたのかもしれないが、それはこれまで言語化されてこなかった。 強く印象に残るムーミン谷の冷たい冬、冬眠の深さ、あれらは生まれ落ちて人間が皆抱える孤独だったのだろう。 受け入れと孤独。 これらは真摯に人生を描き、そこに明かりを灯してくれた。だから、私は繰り返し読んだのだと思う。 それは子どもに手渡すとしたらムーミンという媒介が必要だったのだと思う。



