祝!日本写真協会賞学芸賞受賞、『新写真論』4刷出来
ゲンロンより、2020年3月に『新写真論 スマホと顔』を刊行した大山顕さんが、同書の功績により、2023年日本写真協会賞学芸賞を受賞しました。
http://www.psj.or.jp/psjaward/2023.html
日本写真協会賞は公益社団法人日本写真協会が主催し、1952年の設立以来、日本の写真界や写真文化に顕著な貢献をした個人や団体に対して贈られています。大山さんがこの度受賞した学芸賞は「優れた写真評論・写真研究などを発表し、広く一般に上梓して写真界に多大な影響を及ぼした個人または団体」に贈られる賞です。
受賞理由として、以下の通りコメントが寄せられています。
著書『新写真論 スマホと顔』において、撮影された写真だけでなく、スマホ・SNS・AIなど写真の周りで起こりつつある出来事すべてを「写真」の内部で考えようとする論考は、現代における写真とは何かを考える上で示唆に富む。この労作に対して。
『新写真論 スマホと顔』は、電子批評誌『ゲンロンβ』での大山さんの連載、「スマホの写真論」をもとに大幅な加筆と書き下ろし論考を追加して刊行されました。スマートフォンの登場によって大きな変容を迎えた「写真」を、大山氏は「顔」と「指」をキーとして新たに読み解きます。写真を変えるあらゆる話題を横断する圧倒的にスリリングな人間=顔=写真論として好評を博し、2020年3月の刊行以来、写真をめぐる論考のあらたな定番として、ロングセラーとなっています。
今回の受賞に際して、大山さんからもコメントをいただきました!
日本写真協会賞・学芸賞、とてもうれしく、光栄に思います。これも読者のみなさん、編集に携わってくださったゲンロンのみなさんのおかげです。ありがとうございます。
出版されたのはコロナ禍直前で、収められた章のうち最初に執筆したものは2017年に書いた原稿です。これらをいま評価頂いたことは、この本が「新」写真論の名に恥じないものであることの証明だと思っています。
出版後、コロナが猛威を振るい、東京オリンピックが開催され、ウクライナへの侵攻がありました(この本ではチョルノービリで撮った写真についても論じました)。ぼくにとっては、いずれも写真を通して考えるべき出来事です。つまり、新写真論は今後もアップデートしていきます。目下考えているのは画像生成AIと写真の関係です。
スマホとSNSによって、写真はすっかり特別なものではなくなりました。みんなが日常的に使うものだからこそ、いま写真を通じて多くのことを考えることができます。この本をきっかけに、多くの人がそうしてくれたらうれしいです。
そして株式会社ゲンロンでは本書の重版を決定、先日4刷が出来しました。刊行から3年以上が経過した今、改めて注目を集めている本書をぜひ手に取ってお読みください。
『新写真論 スマホと顔』
【目次】
スマホと顔
01|スクリーンショットとパノラマ写真
02|自撮りの写真論
03|幽霊化するカメラ
04|写真はなぜ小さいのか
05|証明/写真
06|自撮りを遺影に
07|妖精の写真と影
スクリーンショットと撮影者
08|航空写真と風景
09|あらゆる写真は自撮りだった
10|写真の現実味について
11|カメラを見ながら写真を撮る
12|撮影行為を溶かすSNS
13|御真影はスキャンだった
写真は誰のものか
14|家族写真のゆくえ
15|「見る」から「処理」へ
16|写真を変えた猫
17|ドローン兵器とSNS
18|Googleがあなたの思い出を決める
19|写真から「隔たり」がなくなり、人はネットワーク機器になる
20|写真は誰のものか
ファサード
21|2017年10月1日、ラスベガスにて
22|香港スキャニング
23|香港のデモ・顔の欲望とリスク
おわりに
■著者プロフィール
大山顕(おおやま・けん)
フォトグラファー/ライター。1972年11月3日生まれ。1998年千葉大学工学部修了。研究テーマは工場構造物のコンバージョン提案。工業地域を遊び場としてきた生い立ちがこの論文に結実。卒業後松下電器株式会社(現Panasonic)に入社。シンクタンク部門に10年間勤めた後、フォトグラファーとして独立。出版、イベント主催などを行っている。
主な著書に『工場萌え』『団地の見究』(共に東京書籍)『ジャンクション』(メディアファクトリー)、『ショッピングモールから考える——ユートピア・バックヤード・未来都市』(東浩紀との共著、幻冬舎新書)『新写真論 スマホと顔』(ゲンロン)。
現在、監修を務めた「モールの想像力 ─ショッピングモールはユートピアだ」が高島屋史料館TOKYOにて好評開催中(8月27日まで)。
Twitter: @sohsai
シラス「大山顕の都市を現像する」: https://shirasu.io/c/portraitofcity
・コロナの肖像/災害の風景──『新写真論』補遺
『ゲンロンβ54』より
・ゼレンスキー大統領のオンライン演説に見る、外交手腕の2つのポイントとは。
画面越しでも「自分に向けられている」と思わせる大切さ(中央公論.jpへ)
『ゲンロン13』所収 「斜めのミラー」より
¥2,640(税込)|四六判・並製|本体320頁(カラーグラビア8頁)|2020/3/24刊行