クジラの登録方法とあずまんAIの使いかた

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 クジラとは、ゲンロンとシラスが清水亮氏とともに立ち上げた、新しい司書(検索)サービスです。クジラが提供するあずまんAIには、ゲンロンカフェが行なってきたイベントの膨大な対話データと、東浩紀の著作が読み込まれています。ユーザーの入力に応じて、ゲンロンが蓄積してきた人文知を織り交ぜた応答をAIが生成します。現在はβ版です。

 ユーザーは、そうしたAIを有料で使うか、AIを使わずに無料でご利用いただくかをお選びいただけます。本記事では、クジラを利用するために必要なGoogleのアカウント連携とOpenAIのアカウント登録方法などを紹介します。

URL=https://kujira.ai

  1. 1. 登録方法
  2. 2. OpenAI APIキーの取得方法
  3. 3. あずまんAIの使いかた
  4. 4. 言語モデルとチャンク数の設定
  5. 5. 言語モデルによる性能の違い(執筆:東浩紀)

登録方法

 クジラにアクセスすると下記のページが表示されます。初めてご利用される方は「利用規約」を必ずお読みください。「はじめる」ボタンを押すとGoogleアカウント連携画面に進みます。

 

 アカウント連携が済んだら、AIを使う/使わないを選択します。使うを選択すると、AIを使うための設定画面に移行します。まず最初に必要なのはOpenAI社が提供する「APIキー」です。実際にAIを使うまで、やや込み入った手順を踏む必要がありますが、本記事に沿って設定していただければ大丈夫です! では、いきましょう。

※「使わない」を選択した場合は「人工無能」状態のあずまんAIが起動します。お楽しみください。

クジラ-使う/使わない

OpenAI APIキーの取得方法

 クジラではOpenIAIが提供するテキスト生成AIをあずまんAIの応答に利用することができます。そのために必要なのが「APIキー」です。APIキーの取得にはユーザーとOpenAIとの契約が必要で、使用した言語モデルとデータ量(チャンク数)に応じて課金されます(クジラのサービスそのものは無料です)。以下ではAPIキーの取得方法をお伝えします。

 OpenAIの公式サイトに進み、右上にある「Log in」ボタンを押すと下記の画面が表示されます。初めてご利用される方は「サインアップ」を押してアカウント登録を済ませてください。

クジラ-openai

 登録が済むと、下記の画面が表示されるので「API」を選択します。

kujira-openai-select

 次に、サイドバーのメニューから「API Keys」を選択し、画面中央に表示される「Create new secret key」を押します。

kujira-api2

 そうすると、下記の画面が表示されるので、作成するAPIキーに任意の名前をつけてください。

クジラ-api生成1

 「Create secret key」を押すと、APIキーが生成されます。 ※作成したAPIキーは再度表示できません。この時点で、ご自身のメモ帳などへの保存をおすすめいたします。なお、ご自身のAPIキーを公にしないようご注意ください。【2024年4月18日現在、ブラウドのリロード時にAPI設定が消える不具合を確認しております。大変お手数をおかけいたしますが、未保存のかたは新規に取得し、保存ください。】

kujira-api-generate-2

 APIキーをクジラの設定画面の「OpenAI APIキー」の「sk-...」のなかに貼り付けて、設定完了ボタンを押します。クジラのサイト上で行う基本的な設定はこれだけです。

クジラ-設定

  次に、OpenAIのアカウントに利用分の金額をチャージをする必要があります。チャージは、サイドバーの「Settings > Billing」のページから行えます。ページ中央の「Add payment details」を押すと下記のポップアップが表示されるので、個人の方は「individual 個人」を押します。

kujira-billing2

 次にチャージするためのクレジットカード情報を入力します。

クジラ-クレジット入力

 一番上にチャージ金額を記入します。下部は自動チャージの設定欄です。自動チャージしない場合は、中央のボタンを「オフ」にしましょう。

クジラ-チャージ

 これでOpenAIアカウントのチャージは完了です! あずまんAIをお楽しみください。

あずまんAIの使いかた

 あずまんAIとは、ゲンロン完全中継チャンネルの番組約1800時間と、 東浩紀の著作を読み込んで作った対話型の検索サービスです。ユーザーの入力に応じて、関連する動画と著作を表示します。

 あずまんAIによる検索は、入力文章から内容の類似度を計算し、推測結果を出力するため、推測が失敗することもありますので、利用にはご注意ください。時に、失敗する様も楽しんでいただけると幸いです。

 

注意点

 質問はできるだけ具体的な内容を書くと、より正確に応答が返ってくる可能性が高くなります。下記の注意点をご確認ください。

  • ・人名はフルネームで入力してください
  • ・番組の文字起こしデータでは話者が区別されていません。そのため、登壇者が複数いる場合、「XXさんがYYについて発言しているところを教えて」といった質問に正確に答えることができません。ゆくゆくは話者分離を行う予定です。

 

質問例

  • ・おすすめ番組3つと、選んだ理由を教えて
  • ・ゲームに関するイベントはありますか?
  • ・院生チームのコンテンツ教えて
  • ・音楽について知りたいのですが、おすすめのイベントはありますか?
  • ・『訂正可能性の哲学』について教えて

言語モデルとチャンク数の設定

 現在のクジラでは、二種類の性能の異なる言語モデルとして「gpt-3.5-turbo」と「gpt-4-turbo」を選べます。「gpt-3.5-turbo」より「gpt-4-turbo」のほうが性能が高い分、一回答あたりの料金も高くなります。

 チャンクとは、対話ごとに取得するデータ量の単位です。チャンク数が高いほど、入力された文章と類似する情報を多く取得するため、回答の精度が高くなる傾向にあります。

 初期設定では、言語モデルは「gpt-3.5-turbo」、チャンク数は「8」となっています。言語モデルとチャンク数の設定は変更するためには、Open APIキーの下にある「詳細設定」を押してください。

kujira-advance-setteings

言語モデルによる性能の違い

 では、実際に言語モデルとチャンク数の設定によって、AIの応答がどう変わるのでしょうか。『訂正可能性の哲学』を例に紹介します。下の表に、モデルとチャンク数を変更したとき、あずまんAIが出力する『訂正可能性の哲学』の要約がどのように変わるかをまとめました。著者の東浩紀が自ら採点します(以下この章は東浩紀自身が執筆しています)。

kujira-teiseikanosei

 個別のテクストにまとめたので、順に見ていきましょう。

 

gpt-3.5-turbo(チャンク数:4、推定料金:0.03円)

 訂正可能性の哲学は、著者が修正作業を経て完成させた哲学書である。これは過去の信念や立場を見直し、修正しながら新しい発見や洞察を得ることを重視する哲学的アプローチを採用している。作者は、400枚もの原稿を修正する過程で、訂正可能性の哲学の実践として、常に自己の考え方や表現を振り返り、継続的な改善を行ってきた。

 無知な学生が、とりあえず試験問題の回答欄を埋めるため、「訂正」と「哲学」という単語から得たインスピレーションだけで書いたような文章。AIの悪いところがよく出てますね。『訂正可能性の哲学』が原稿用紙400枚ほどの著作であるという事実だけはどこかから拾ってきらしいので、5点差し上げましょう。【採点:5点

 

gpt-3.5-turbo(チャンク数:8、推定料金:0.79円)

 「訂正可能性の哲学」は、人間が間違いを com 認めつつも、それを訂正する力を持っていることを主張します。この哲学によれば、間違いや誤りがあるからこそ、個人や社会は成長し進化していくことが可能となります。ポリティカル・コレクトネスやデータ万能主義が支配する現代社会において、この訂正可能性は重要な考え方となっています。

 だいぶよくなりました。冒頭で主張が要約され、後半では「ポリティカル・コレクトネス」や「データ万能主義」といった実際に著書内に登場するキーワードも触れられています。チャンク数が増えたことで、書籍に関する情報量が増えたわけです。人間に例えれば、とりあえず本をめくってみたといったところでしょうか。冒頭に誤記があるのもかわいいです。しかしそこは減点ですね。【採点:30点

 

gpt-4-turbo(チャンク数:8、推定料金:6円)

 訂正可能性の哲学は、人間が間違いを犯すことは避けられないが、その間違いの中に改善や学習の可能性が存在するという考え方を主張しています。この哲学は、ポリティカル・コレクトネスやデータ万能主義という現代の潮流に対するアンチテーゼとして提案されており、間違いを通じてより良い理解や行動へと進歩することの重要性を強調しています。ウィトゲンシュタインやアーレント、ローティ、バフチン、ルソーなどの思想家の考えと結びつけながら、東浩紀はこの概念を深く掘り下げています。

 内容は前のものと実質的に変わらないのですが、モデルが変わったことで哲学者の名前を列挙するといい感じになるという常識を身につけたようです。高校生から大学生への進化といったところでしょうか。誤記もなくなりました。学生バイトに頼んで要約を書かせるとこんな感じでしょうから、時給で考えると「6円」はかなりお得な気がします。【採点:50点

 

gpt-4-turbo(チャンク数:30、推定料金:20円)

 訂正可能性の哲学は、人が誤りを犯すことは避けられないものであり、その誤りから学び、成長することに価値がある、という考え方を中心に据えています。この哲学においては、誤りを負のものとしてではなく、新しい理解や変化への扉として捉えるべきものとしています。現代がポリティカル・コレクトネスやデータ万能主義に支配されている中で、訂正可能性の哲学は、それらに対するアンチテーゼとして提案されています。人としての訂正可能性を肯定し、たえざる訂正を進める中で、真の知識や理解が得られる、という逆説的な態度を持つこの哲学は、多くの思想家や学問的背景を持つ人々によってさまざまな解釈がされています。

 あれれ。だめになってしまいました。これはいただけません。チャンク数が増えたのに、前の要約より冗長になってしまっています。「訂正」が「逆説的な態度」であることをきちんと捉えたのは評価できますが、僕の訂正可能性の哲学が多くの思想家によって解釈されているという現実はないので、そこは勇み足の記述です。本を読み過ぎた結果、逆に本質がわからなくなってしまったといったところでしょうか。残念。【採点:40点

 

gpt-4-turbo(チャンク数:60、推定料金:42.82円)

 訂正可能性の哲学は、東浩紀によって提唱された哲学の概念で、人間は必ず間違える存在であるが、その間違いこそが新たな可能性を生み出すという考え方です。この思想は、ポリティカル・コレクトネスやデータ万能主義が支配する現代社会へのアンチテーゼとされています。東は、ウィトゲンシュタイン、アーレント、ローティ、バフチン、ルソーなどの思想と結びつけ、訂正可能性という言葉を、進化し続ける哲学の新たな概念へと発展させました。

 やった! これはかなりよい。まず最初に、訂正可能性の哲学が東浩紀によって提唱された哲学の概念であることを書いているのがよいです。ほかの要約はそこを掴み損ね、失敗していました。主要な哲学者名も復活しましたし、「進化し続ける哲学の新たな概念」という結びの言葉もいいですね。チャンク数30だと本質を見失うけれどもチャンク数60になるともういちど正しい理解に戻ってくる、というのは人間の読書に置き換えても興味深い。中途半端な読書はダメ、でも頑張れば道は開けるということでしょう。ChatGPTさん、ご苦労さまでした。【採点:80点

おわりに 

 以上、クジラの登録方法とあずまんAIの使い方の解説でした。クジラとあずまんAIは、Googleの検索エンジンによるランキング、あるいはSNSのアテンションとは違ったやり方で、隠れた人文知を発掘する司書(検索)サービスです。ランキングとアテンションのアルゴリズムだけでは、人文知の豊かさを掘り起こすことはできません。その理由を、東は「哲学や文学の世界では、だれも訪れない本棚や図書館の片隅に宝石が眠っていることがあるから」だといいます。

 クジラもあずまんAIもしばらくはβ版として運用を続けます。始動したばかりの「クジラ」プロジェクト。応援のほどよろしくお願いいたします。

クジラ
URL=https://kujira.ai

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