ゲンロンSF文庫より、中野伶理『那由多の面』、大庭繭『うたたねのように光って思い出は指先だけが覚えてる熱』発売!

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webゲンロン 2025年6月27日 配信

 

ゲンロンの電子書籍レーベル「ゲンロンSF文庫」より、あらたに中野伶理『那由多のおもて』(ゲンロンSF文庫011)、大庭繭『うたたねのように光って思い出は指先だけが覚えてる熱』(ゲンロンSF文庫012)の2作がリリースされました。両作は〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉にて第7回ゲンロンSF新人賞(選考委員:菅浩江、伊藤靖、大森望、東浩紀)に輝いた受賞作を、改稿のうえ電子書籍化したものです。いずれも大森望さんによる解題を収録しています。

『那由多のおもて』、『うたたねのように光って思い出は指先だけが覚えてる熱』はゲンロンショップ、およびKindleストアでご購入いただけます(ともに税込440円)。

中野伶理『那由多のおもて』(ゲンロンSF文庫011)

日本独自のSFの誕生をことほぎたい。伝統芸と伝統工芸の切り口で、それらを堅実な未来へ続ける手腕が堪能できる。──菅浩江

美大で能面の修復を手掛ける飛鳥のもとに、ある日、父の死の知らせが届く。彼女は遺品を整理するなかで、父が能面制作をしていたこと、そして十年以上前に死別した母の面影のある、未完成の「霊女」の面を遺していたことを知る。面の依頼者である能楽師・時雨と、人間の情動を読み取るAIデバイス「ペルソナ」の力を借りて、その面を完成させようとする飛鳥。だがその探究の先にあったのは、彼女が予想だにしない真実だった──。

著者プロフィール

中野伶理(なかの・れいり)
作家、ライター。第7回ゲンロンSF新人賞正賞、同第6回東浩紀賞、第5回菅浩江賞受賞。小説に「星の音は乾いて」(ファッションSFウェブジン『matotte.』8号)、「ジジのワラダ」(『小説すばる』2024年8月号)など。

大庭繭『うたたねのように光って思い出は指先だけが覚えてる熱』(ゲンロンSF文庫012)

妊娠を知ったツバサは死期迫る母の意識に潜り、自分が命を宿した瞬間の日々へと赴いた。「うたたね」と呼ばれる意識の中でツバサは未熟な母と語らい、母の体を借りて過ぎ去った日々を体験し、夜の仕事に行く母について行き、母が想像の中で育た「姉」と出会う。ツバサと母の触れ合いは、同世代の友人のような煌めきと、肉親同士のぬくもりに満ち、人生を分つ親子の緊張と和解へと移り変わっていく。
ままならない人生と社会への穏やかな決意を描く意欲作だ。──藤井太洋

ホステスとして働く「わたし」は、透明ではち切れそうな、水風船のような「姉さん」と暮らしている。仕事を終えて家に帰ると、ベッドの上の姉さんの、柔らかさと冷たさに身を委ねる。そんな日々を送るわたしのまえに、ある日、幽霊のように透けた「女」が現れる。彼女はわたしを「ママ」と呼び、嘘のような話を始める──自分は他人の脳にアクセスする技術で、ママに会いにきた。この世界は未来のママの、記憶にすぎないのだ、と。

著者プロフィール

大庭繭(おおば・まゆ)
1995年生。作家。2024年、「うたたねのように光って思い出は指先だけが覚えてる熱」で第7回ゲンロンSF新人賞受賞。著作に「人魚ごっこ」(『小説すばる』2024年11月号、集英社)など。

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