
「君と歩く、くり返しの行き先」
秋吉洋臣
あらすじ
「アレ?! 私は、さっき、死んだんじゃ……」。闘病の末、恋人を想いながら死んだユイカは、気づくと大学受験当日の小田急線にいた。目の前に立った親友リツコは、彼女に衝撃の事実を告げる――ヨシミツくんと付き合った女性はみな、彼の死を引き金にするタイムループに巻き込まれる。世界はすでに4718週目、ループ参加者は6000人以上。世界の秩序を維持する「交際運用特務機関エデン」と、ループの「カンスト」を信じヨシミツくんの命を狙う過激派の戦いのなか、ユイカは彼の尊厳を守るべく行動を起こす──。
選評
非常によくできた作品。[……]まず設定は魅力的で、ループによって増える記憶保持者たちがシステムを作っているという世界観が良い。ループを繰り返すことで行政機構が土地ではなく時間軸上で発生し、しかもリセットのたびに強固なものになっていく。
[……]いわゆるセカイ系に近く「自分、恋人、世界」の三者によって物語が構成されるが、そこからの脱却こそが本作のカタルシスになっている。──柴田勝家
受賞のことば
栄誉ある賞を賜り、心より御礼申し上げます。当初はご評価をいただきつつも梗概選出に届かず、突破口を暗中模索していました。
ですが、講座を通じ、講師の皆さま、同期や先輩諸氏との交流とご助言に支えられ、最後まで書き続けることができました。
最終実作で初めて選出いただいた時は小躍りし、受賞に際しては喜びと緊張で指先が震えました。講座での学びを糧に、これからも研鑽を重ね、反復と更新のタイムループをいとわず創作に取り組む所存です。




















